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【日本シップブローカーズ協会設立60周年企画】

シップブローカー女性社員座談会 「女性がもっと活躍する海運業界に」

日本シップブローカーズ協会は同協会の設立60周年特別企画として、会員企業で働く女性による座談会を開催した。

海運業界は近年女性の活躍推進に取り組んでいるが、まだまだ男性の比率が高い。その中で、女性がより活躍できるようにするにはどうすべきかを実際に活躍している女性7人に聞いた。なお、できるだけ本音で語って頂くために社名と氏名を伏せた覆面座談会とした。


司会・聞き手=日刊海事プレス副編集長・深澤義仁、日刊海事プレス記者・春日映莉子


●「語学」と「国際」が入口

司会: 今回は日本シップブローカーズ協会の設立60周年の特別企画として、同協会会員の7名の女性社員の方々にお集まり頂きました。シップブローカーは海運業界になくてはならないお仕事ですが、一般にはほとんど知られていません。海運業界そのものも決してメジャーな産業ではありません。そこでまず、みなさんがシップブローカー会社に入社した経緯から教えてください。


Aさん: 私は中途入社で、現在の会社に入社したのは英語を使う仕事をしたかったということと、前職が一般職だったので一般職と総合職の中間ぐらいの仕事を希望していて、転職エージェントに紹介されたのがきっかけです。正直言って面接で海運業の説明を聞いても全く分からなかったのですが、なんとなく会社の雰囲気が良さそうだったので、仲良くやっていけそうかなと思って入社しました。


Bさん: 私も中途入社で、現在の会社に入社したのは、英語を使う仕事をしたいということももちろんありましたが、尊敬する父親が海運業界にいて、同じ業界に入りたいと思ったのがきっかけです。


Cさん: 私も転職活動がきっかけです。前職の広告代理店では色々な業種の方と接する機会が多かったのですが、一つの業界の知識を深く身につけていきたいなと思っていた時に、現在の会社の募集を見つけました。


Dさん: 私は何回か転職していて、一度貿易の仕事をしたことがあったので少しは知識を生かせるかなと思いました。シップブローカーの仕事の内容は全く分かっていなくて、入ってみてこういう業界があるんだなと知りました。


Eさん: 私は前職が海運会社で、客船関係の仕事をしていました。いったんやめて違う分野で仕事を探そうと考えたのですが、探している時もやはり船に関する仕事が気になりました。現在の会社の募集をみた時に、同じ船でも運ぶ対象が人から鉄になるんだなと思いましたが、それもおもしろいかなと思って応募しました。


Fさん: 海運業界に入ったきっかけは、大学の学部が外国語だったので、英語を使う仕事をしたいと思ったからです。最初に船舶管理会社に就職し、そこでは内勤が多かったのですが、船主、用船者、荷主などの様々な方々と関わるような仕事がしたいなと思い、シップブローカーに転職しました。


Gさん: 私も中途入社ですが、グローバルな仕事、英語を使う仕事をしたいと思いながら転職活動をしていました。もともと貿易や物流関係に興味をもっていたのですが、それまで知らなかった海運の求人を見つけて、貿易の99%が海運ということで興味をもち、現在の会社とご縁があって入社しました。


司会: 語学力を生かしたい、あるいは国際的な仕事や貿易関係の仕事に興味があったからという方が多いようですね。それでは皆さんにお聞きします。シップブローカーという仕事を入社前にご存知だった方は何人いらっしゃいますか?(1人が挙手する) 

それでは、実際に入社してみてイメージどおりだったという方は何人いらっしゃいますか?(誰も挙手しない)。

海運業界自体があまり一般には知られていないということもあり、シップブローカーの仕事がどういうものかを知らずに入社された方がほとんどだということが分かりました。

それでは次の質問です。皆さんは普段、社内だけでなく、船主やオペレーターを始めとする海運業界の方々とお付き合いがあると思います。自分でご覧になっている範囲で、海運業界は女性が働きやすい業界と思うか、あるいはこういうところを直したらもっと女性が活躍しやすくなるというご意見をお聞かせください。


Gさん: 実際に働いてみて感じたのは、海運業界やシップブローカーは男性が多いということと、あとはお酒のつき合いが多いということです(一同笑)。その点を考えると、女性にはちょっと働きづらいところもあるのかなと思います。ただ、個人的な意見ですが、女性の方が丁寧な仕事ができたり細かいところに気付いたりできる部分があると思うので、特にそういった部分で必要とされていると思いますし、活躍されている方もいます。


Fさん: 海運業界の環境は歴史的に体育会系で、男性が中心になって活躍されているというイメージです。ただ、私の周りで言うと、営業やオペレーション、造船、マンニングなどの様々な分野で女性が活躍されています。確かに男性が多いのですが、その中ですごく頑張っている女性が多いという印象です。あとは業界が狭いので、少ない女性同士で親近感をもって仕事ができるという印象があります。


Eさん: 私も皆さんのご意見と同じで、この業界は男性の方がメインで、特に上の世代になるほど活躍されている女性にはあまりお会いしたことがありません。ただ私よりも下の世代の方ではたくさんの女性が頑張っていますので、10年後や15年後にはもっと女性が活躍できる世界になるのではないかと思います。


Dさん: 普段やり取りしている方は女性が多いのでコミュニケーションがスムーズだったり、そういったところはすごくやりやすいと思います。逆に、これまで女性とか男性とかあまり考えないで仕事をしてきましたが、この業界に入って女性ということを意識する機会が増えたという意味では、男女の役割分担みたいなものがあるのかなと感じるときがありますので、みんながもっと意識せずに働けるようになっていけばいいなと思います。


Cさん: 日本の海運業界は、海外と比べると働いている女性がとても少ないと感じます。一度海外のシップブローカーの方と日本で開催されたパーティーに参加した時、その方がこんなにも女性が少ないのかと驚くぐらい出席者のほとんどが男性でした。日本のシップブローカー企業にも女性はたくさんいますが、女性が表に立つというケースは少ないと感じます。とはいえ、海運業界自体が女性にとって狭き門という印象はありません。海や船と聞くとどうしても男性のイメージが強いですが、まだ女性が少ないからこそ女性にとってチャンスが多い業界なのではと思います。海運に限らず日本では女性が社会で活躍することが未だ浸透していないので、女性が活躍することでよりやりがいを感じることができる業界になっていくのかなと思います。


Bさん: 以前大手海運会社の方から、男性は乗り物が好きなので海運業界は男性が多かったけど、グローバル化で英語を使う機会が広がっているので女性もだんだんこの業界に入ってきているという話を伺いました。確かに自分もそれがきっかけでこの業界に入ったので、語学力を活かせる環境があるというのは女性が活躍しやすい業界なのではないかと思います。


Aさん: 女性が少ないので、それによってお客さんからも社内でも少し大事にしてもらえるというプラスの面もありますが、逆に男女で分けて扱われているなと思います。一方で男性にも、これまでの海運業界の方のような働き方はしたくないけれどこの業界でやっていきたいという方がたくさんいると思います。女性が増えて考え方がより多様化すれば、もっと全員にとってやりやすい業界に変えていけるのではないかと思います。



司会: 皆さんのお話を聞くと、海運業界で活躍されている女性はいるけれど、まだ少ないという印象をお持ちのようですね。ただ、女性の活躍の場はこれからどんどん広がり、それによって業界全体がより良い方向に変わっていくという期待を示して頂きました。



●間に立つ難しさと楽しさ

司会: 次の質問です。今後女性が海運業界でどのような役割を担うと考えますか? ご自身の希望も含めてお聞かせください。


Dさん: 男性と女性の職務能力の差がどこまであるのか科学的に分かっているわけではありませんが、細やかなフォローができるのが女性の強みなのかと思っています。コミュニケーションについても、どちらかというとソフトにやっていけるのではないかと思います。


Eさん: 営業の方は外出が多いですが、すぐに対応しなければならない時にカバーできるのが私たちの強みだと思うので、そこは大事にしています。


Fさん: 皆さんと重複しますが、この業界は扱う数量も金額も大きいので、どんぶり勘定というか、ざっくりになりがちですが、女性の細かく気がつくところや丁寧な仕事がこれから益々役立っていくのではないかと思います。


Gさん: 私自身はシップブローカーではなく、そのサポートの仕事をしていますが、ブローカーの方が気付かないような細かいことに気付いたり、資料や書類を丁寧につくったりまとめたりすることで、お客さんから安心して任せられる会社だと思って頂けるよう頑張っています。私の今の立場では、女性の役割は細かいところに気付いてサポートをしていくことかなと思っています。


Cさん: シップブローカーを筆頭にチームで動くので、チームワークが大事だと思いますし、お客様や社内のニーズに素早く対応できる気配りが大事だと考えています。あとは、シップブローカーという業種があまり一般的には知られていないので、今後女性がシップブローカーとして活躍することで業界を盛り上げていくことが大事だと思います。実際かっこいい仕事ですので、女性が憧れる仕事になればいいなと思います。


司会: ありがとうございます。次は、シップブローカー企業に入って大変だったこと、逆に楽しかったことをお聞きします。匿名なのでどうぞご遠慮なく()


Cさん: 専門用語や業界独特の流れを覚えるのが大変でした。あとは皆さんおっしゃるように、お酒のお付き合いがとても多い業界だと思うのですが、私は全くお酒が飲めないので、いつも申し訳なく思ってしまいます。楽しかったことは、色々な方々と関われることや、今までは遠い世界のニュースと思っていた各国の政策や経済が直接私たちの仕事に関わってくることを肌で感じて、少し視野が広くなったかなと思います。


Bさん: 大変だったことは同じで、楽しかったこともほぼ一緒です(あとはお客さんとやり取りしていて、だんだん仲良くなっていることを実感できた時は楽しいなと思います。


Aさん: 私の担当がポストフィクスチャー業務だからかもしれませんが、シップブローカー自身には決定権がないので、両サイドが決めるまでは何時になろうが土日だろうがやり取りを続けなければならないことです。自分の仕事が終わらないから残業するならまだ納得がいきますが、誰かの失敗をカバーするためとなると、お客さんではありますが、しっかりしてくださいとちょっと文句を言いたくなる時もあります(笑) 土日でも連絡がつかないと気にするお客さんだと、家に帰っても頻繁にメールをチェックしなければならず、ちょっと面倒くさいなと思うことがあります。あとは間に入っている以上、当事者よりも詳しく知っているということを求められるので、ある程度の知識が身に付くまではけっこうしんどかったです。楽しいことは、皆さんおっしゃっているように、他の国で起こっていることがダイレクトに仕事に影響するところです。社会がどのように動いているのか、身近にあるものを誰がどのように運んできて、どういう人がどういう理由でほしがっているからこういう値段になっているといったことが見えてくると、自分たちがいる業界以外のことにも興味が湧いてきて視野が広がりました。


Dさん: 間に入る仕事はちょっと怖いなと思う時があります。何か無理を言われた時に、どちらに対しても強く出られないので負けてしまい、まだ修行が足りないなと思うことがあります。逆に人とのつながりがすごく大事な仕事なのかなと思っています。こちらが一方的に感じているだけかもしれませんが、やり取りしている間に仲良くなっていくのを感じることができ、いい意味で家族的なものを感じることがよくあります。


Eさん: 何か問題が起こった時に、心の中ではこちらの言い分が絶対に正しいと思っても、常に中立でなければいけないことです。両方とも間に入っている私たちには強く言ってくるけれど、それをそのままつないだら全く仕事にならなくなってしまうので、その言葉をどのように反対側のお客さんに伝えるか言い回しをすごく考えて、なんとか丸く収まってあーよかったと思うことが度々あります(笑)


Fさん: 私もだいたい同じですが、板挟みになることがすごく多くて、いかにうまくまとめるかが大変というのが感想です。あと大変なのがお酒とゴルフ。私はゴルフがすごく下手なのですが、業界にゴルフヒエラルキーのようなものがあり上手い人がすごいみたいなところがあるので、それがちょっとプレッシャーになっています(笑) 楽しいのは、日々船が動いているので毎日色々なことが起こり、仕事として飽きないというか、毎日新しいことを勉強できるところです。


Gさん: 私は普段アシスタントの仕事をしていますが、仕事をより理解するためにブローカーを少し経験させて頂いて、その時に仲介業者としてどちらの主張を取るべきなのか板挟みになったりしました。言い回しに気をつけるなど、ただ言葉を相手に伝えるだけではないところが大変だなと思いました。楽しいところは、取り扱う金額が大きいので大きなビジネスに携われているという実感があります。あとは、楽しいこととは少し違うかもしれませんが、この仕事を始めてから船を見ると嬉しくなり、船に興味を持ち始めました。


司会: シップブローカーは仲介業ということで常に両サイドのバランスを取らなければならず、合意のタイミングや内容を自分たちでは決められないもどかしさがつらいところですね。ただ、交渉が難航するほどまとめた時の喜びは大きいでしょうし、仲介業だからこそ色々な方々とお付き合いでき、その関係が深まったり広がったりするところにこのお仕事の醍醐味があると感じました。


継続は力なり

司会: 最後の質問の前にお伺いします。この中で2008年のリーマン・ショックの前に入社された方は何人いますか?(一人が挙手する)ということは、ほとんどの方が海運の好況を知らないということになりますが、今は景気が悪いと感じている方は何人いますか?(全員が手を挙げる)


Eさん: ただ、もっと上の年代の方のお話を聞くと昔はもっと厳しかったそうなので、今はまだましなのかなとも思います。


司会: そうかもしれませんね。それでは最後の質問ですが、男女を問わずこの業界にこれから入ってくる後輩たちへのメッセージをお聞かせください。


Aさん: 下積みの期間は知識も経験もないので、どのように自分の仕事のやり方を確立していけばいいのかがつかみにくいと思います。ただ人と話すことが好きな方であれば、お客さんや社内の人にどんどん聞いていけばいいので、そういう方であれば自分が何をやっていきたいかを見つけられると思います。身につけた知識は海運業界の別の仕事でも生かせるので、すごく武器になると思います。


Bさん: 私は昨年11月に入社したばかりなので後輩へのメッセージなど何様だという感じですが、知識の習得などで最初は大変でも、英語を使いたくてちょっとお酒が好きな人であれば(笑)、絶対に頑張れると思います。


Cさん: この業界は男性が多いですが、それ以上に船が好きな方が本当に多くて、仕事に情熱を注いで全力で働いていらっしゃる方が多いという印象です。ですから男女関係なく仕事に対する姿勢が非常に重要で、それが常に見られる社会だと思います。信用と実力勝負の世界なので、自分次第でいくらでも成長できますし、船の世界に興味があればとてもやりがいのある業界です。


Dさん: 私も昨年7月に入ったばかりなので大きなことは言えませんが、私のように貿易に携わりたいという考えで就職先を探していて海運業界を知らないという方はけっこう多いと思います。ぜひ海運業界を知っていただいて、大きな会社だけではなく、それを繋いでいる会社があるんだよということをたくさんの方に知っていただけたらいいなと思います。


Eさん: 現在の会社に務めてこの夏で15年になりますが、最初の頃は相手の船社さんも商社さんも私には全然問い合わせをくれない、電話で取り次いでいるのになかなか名前も覚えていただけなくてつらいことも多かったのです。それでも頑張っていれば知識が身に付いてきて、名指しでお願いされるようになるとやりがいも出てきます。長く続けていれば必ず力になるものがあります。


Fさん: 海運という業界では、船で荷物を港から港に運ぶ間にいろいろなことが起きますし、船価、運賃、用船料が決まるまでに様々なドラマがあります。そこに携わるのは面白いと思いますし、毎日新しいことが起こるので、そういうことを面白いと感じる方にはすごくいい職業です。


Gさん: 海運業界は日本だけでなく世界の経済や政治の情勢、環境問題などにも左右されますので、海運だけでなく様々な知識が増える業界だと思います。私も日々勉強中ですし、そういう知識を増やしたい方に入って頂けたらなと思います。


司会: 皆さんのお話を伺って海運、シップブローカーという仕事の魅力を再確認しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。