3隻を差押さえられたCOSCO 問題 2011年10掲載
   

中国最大の国営海運会社COSCOが昨年年末から燻ぶっていたドライバルクの傭船料の未払いが3隻の差し押さえを惹き起こし、これをFT(Financial Time)が8月23日の記事で取上げたことで一躍脚光を浴びることとなった。 事件としては真新しい問題ではないが、当事者がドライバルカー部門ではMOLとNYKに次ぐ世界第3位の大手海運会社であり、コンテナ船でも最大級の規模を誇る企業であるだけにその影響は無視出来ない。

 今回は、国家の高度成長に伴い急成長した国営海運会社COSCOの動向の推移をFTの記事を中心述べる事とし、それに対して寸評を加える事で10月号の原稿とすることとする。
   
(一) 問題発生の背景と経緯
1)

COSCOの傭船比率と高傭船料
表1参照、低迷を続けるCape-size BCの傭船船腹の比率が59%と抜きんでて高いことに問題がある。 正確な隻数とCOA/TC‐out等で市況低落への危機回避をどの程度行っていたかは確認出来ないが、08年の9月のリーマンショック前は5年間の傭船料が約$80,000 dailyであり、この高傭船料で多数傭船していたことは事実であり、これが主因であることは間違いない。 今年に入ってから8月中旬迄の$10,000 daily前後が続いたことで採算の急悪化がこの問題の発端である。

2)

FT(Financial Time)の記事で脚光
(i) 8月23日
COSCOが市況低落の最中、数社との長期用船契約の傭船料の未支払いで市場に不安感が増大している。 前述の様に2008年9月のリーマンショック前に成約した高傭船料の支払いがスポットマーケットの低迷で傭船料の支払いが困難となった為である。  2008年9月のリーマンショック後、巨大となったドライバルク市場での初めての契約不履行である。  
Bunge (Large commodities Trader, mainly grain)も米国の穀物積出港ニューオリンズで第3船目を差押えたと報じている。
●COSCOは、傭船料の値下げは、通常の会社運営であり営業の基本方針から外れたものではなく株主である中国政府のコスト削減の要求に沿ったものであると主張している。
●Baltic Exchangeは、この種の取引は双方の合意が必要であり、片方の一方的な変更は受け入れ難いと警告している。

(ii)  8月27日  
CCOSCOの今年前半(1-6/11)の収益が4億3,200万ドルの損となり、株主のコスト削減への圧力が強くなっている。 COSCOは、この種の紛糾や傭船料の値下げ調整の時に船舶差押さえは仕方がないことである。 これらの事後処理は適切(appropriately)に行っており一部の船主が大げさに騒いでいるだけで驚くべきことではないと強気な発言をしている。
●値下げ調整の対象となっている隻数は不明だが、18隻を傭船に出しているあるギリシャ船主は、交渉中であると言っている。
●Baltic Exchangeから除外された例として豪州の鉄鉱石の山元のFortescue Metalsがある。 社会
的な批判が高まるとCOSCOも除外されることとなるかもしれないとBaltic Exchangeは警告している。
●支払能力のある海運会社が期間延長の妥協なしで傭船料の値下げに成功した例は少ない。 最近ではKorean Linesがあるが、破産宣告後に値下げ交渉を行っている。この方式が一般的であるとしてCOSCO方式に対して異論が広まっている。

(iii) 8月30日
COSCOの問題は、同社との傭船契約が数多くの船主を船舶への投資意欲(買船や新造船発注)を増幅させた結果長期傭船に結びついたことである。 この長期傭船増は2007年の第10期全国人民代表会議で中国の輸出入の75%を中国がコントロールしている船舶で行う事が決定された事が少なからず影響を与えている。
先般退任となったJinfu船長(98年11月Chief Executiveに就任)の主導の下、この路線も実践された。今回の傭船料削減による株主(中国政府)への優遇策、即ち、中国の輸入コストの削減になるとの政治的発想があったが、 差押さえによりこの発想が国際海運のルールにより頓挫したことを意味する。

(iv) 9月1日
 9月2日のLL(Lloyd’List)も延滞金の支払いが始まったと報じた。 FTも傭船料の支払いが始まった。 但し、一部減額等の条件変更がるようであると報じている。

    (二) 結びに変えて
1)

以上の経緯から言えることは、8月初めにLloyd’s Listの報道では力足らずで強いインパクトを与えなかったが、超一流の経済紙のFinancial Timeの報道をきっかけで最終的にCOSCOが中国政府である株主優先策を放棄せざるを得なくなり傭船者と船主間の通常の交渉になった。 この事態は海運業にとっても歓迎すべきことである。  解決策次第では政治問題化や海運産業の慣習やモラルに大きな影響を及ぼし兼ねなかったからである。

2)
筆者の最近迄の台湾勤務から感じていたが、中国には契約に対する感覚や認識にこの他のアジア諸国を含め違いがある。 以下の文章が正鵠を指していると思われる。「Real negotiations begin after the signing of a contract, which is just an agreement to work together」LL on 2/Sep/11、即ち、通常の契約の重さとは明らかに違いがある。これが世界海運の新たなるstandardになる事は避けられた事となったとも言える。 これも歓迎すべき結果である。
3)

海運業には仏教で言う「業」に似た事として
●市況の暴落まで継続される性懲りも無い過剰投資であり、それに伴う過剰船腹である。市況の低落と投資対象である船舶の資産価値の減少で苦悩の渕に彷徨することとなる。 
●この結果の苦悩の一翼を担うのが、急成長した怖いもの知らずの海運企業の経営不振従って、今回のCOSCOの差押さえ(arrest)となった問題は、冒頭に申し述べた通り真新しい事件でないのである。

4)

あるニューヨークのギリシャ系船主は、傭船期間延長で全額補填されたとしても、COSCOの信用喪失による損失が40年は継続するであろう。 船主がCOSCOに傭船に出すことに意欲を喪失させたからであると言っている。 
この種の問題の発生は、その企業の期近な予測の拙劣さを世界に知らせたことでもある。 今後の経営政策次第であるが、このギリシャ船主の指摘は正しいと言えるかもしれない。  
最大級の規模を誇り、国営企業ということで最も安全な会社から現在の不安視される会社へ転落した事で歴史に残る例となっている。

5)

COSCOと言う世界最大級の会社の誕生はその傭船政策で数多くの船主を船舶への投資意欲を増幅せたと述べたが、これに加え造船業への投資をも拡大させたと言える。 海運・造船の過剰投資の要因の中心的な海運会社が問題を起こしていると言えそうである。 言い換えれば、海運・造船の過剰投資を証明する事件とも言えそうである。

6)
COSCOの様に国営企業の運転資金不足の補填は国営銀行の不良債権の顕在化である事は間違いないであろう。 これが共産党一党独裁下の中国政府の財政赤字化の端緒と言えるのか、専門家に聞きたい所である。

船型 扱い隻数 傭船隻数(%)
Cape-size 95 56(59%)
Panamax 165 88(53%)
Handymax 115 28(24%)
Handy-size 66 29(44%)
合計隻数 441 201(46%)

表1 9月1日海事新聞による

   

 

  過剰船腹の顕在化を遅らせたStorage 船 2011年8月掲載
   

VLCCのマーケットはCape-size Bulker(CapeBC)と共に係船点に近い水準で低迷している。 この大型船は輸送コストの削減を目的として産業界の経済性の追及の結果の船型であり汎用性欠ける嫌いがある。 その分世界経済の動向と船腹需給に敏感に反応する特質を持っている。

CapeBCの過剰船腹に就いては2010年と2011年(予想)の2年にわたり既存船腹の20%を越える200隻以上の新造船が竣工していることで供給圧力の強い中で、一時の勢いがなくなりかけている中国の鉄鉱石の輸入増では、大量の新造船による船腹供給増の吸収が困難となっている。即ち、過剰船舶腹による市況悪化となっておりその見方が定着している。

 一方のVLCCの過去1年の市況概略(資料1参照)は、昨年7月以降は年末と旧正月前後にWS60を辛うじて超えるのが精一杯の市況であった。 今回は、3月号の“低迷が続いた後半のタンカーマーケトの背景”を追跡する方法で現在の低迷中のマーケット整理し分析を加えることとする。
   
(一) 船腹供給面
1)

Storage船 (洋上貯蔵船) の動向
2010年6/7月の40隻弱をピークに20を下回る水準で推移し、市況低迷の最大の要因であったが、昨年の7月以降、Storageの需要増での船腹需要増に寄与することは殆ど無かった。 詳細資料2のStorage船の推移表参照

2)

船腹(VLCC)の動向 ― 資料2参照
過去1年の純増を見る限りに於いては、市場から感じる程の過剰な数字とはなってない。

●半年ごとの隻数は8席減と9隻増で1年間では僅か1隻純増となっている。 竣工数から解体(スクラップ)の数を差し引くと船舶数の純増が少なすぎる感じがする。 改装なのか他に転用されたのかの追跡の必要がありそうである。
●CapeBCの20%増の竣工隻数と比較するとVLCCの過剰船腹の圧力は弱い。 但し、SSYのReportによると、VLOOの8隻(既存船の1.4%)あり、CapeBCの市況が悪いことで当分タンカーに就航することとなると思われる。
● 過去1年の純増は1隻でも今年の9隻増にVLOOの8隻を加えると17隻となる。無視できない数字となる。

    (二)船腹需要面
1)
中国の輸入動向 − 資料4参照
●2009年に日本を凌駕して世界第2の輸入国となった。 2010年は対前年比17.4%増の2億3,900万トンとなった。
●中東からの輸入比率が昨年前半の44%から後半以降約50%へ増加した。
●上記の中国の状況では、新造船の供給増を消化出来ると見るのには抵抗を感じる。
2)
その他のOECD 諸国の需要も特筆すべき変化はなかった。
    (三) 結びに変えて
1)

深刻度が強まる過剰船腹問題
●VLCCの運賃の低迷は2010年の7月より年初頃から始まるべきだったが、40隻に及ぶStorage船の存在が過剰船腹の状態の顕在化を先送りにし隠蔽していたと言えるからである。
現象面ではVLCCの燃料油消費削減を目的とするスピードダウン(荷渡し遅れによる結果としての石油の洋上在庫が石油会社の陸上在庫より多いと言われている)があっても市況が反応しないこと
●7月初め積の西アフリカ/印度のスポットに16隻のofferがあったこと、リビヤの輸出減でスエズマックスが大西洋で過剰供給となっている事もあるが、VLCCの過剰船腹の現象の1の例である。

2)
福島原発事故の後遺症
●原発廃止を決めた国は目下の所はドイツ、イタリアとスイスのみである。  世界第一・第二のエネルギー消費国である中国と米国の原発の見直しは出ていないこともあり、石油や燃料炭の価格と需要には大きな影響を与えていない。 即ち、原油輸送のVLCCと石炭輸送用のドライバルカーへの影響はなく後遺症は発生していない。 あるとしたら、日本のLNG需要の急増でLNG船の傭船料が10万ドルの大台を超えたこととLNG船の発注が増えたことである。
●日本で顕著に現れている電力不足に伴う省エネへの動きがある。 石油の暴騰を齎したオイルショック(日本の高度成長の歪みとも言える)後の省エネ技術の進展と同じ効果を齎すかもしれない。 即ち、中国と印度の高度成長の歪はエネルギー高騰を齎していたが、福島の原発事故がネルギー高騰の歪を顕在化し強化させたと言えそうである。 省エネの定着と長期的に自然エネルギーへの技術の進展が石油への依存度を減らす可能性はあるが、原発の計画の遅延と発展途上国のエネルギー需要増でタンカーとドライバルカーに対してプラス要因となることは間違いあるまい。 但し、エネルギーの多様化もあり、オイルショック後、燃料炭の海上輸送が再開されたほどのインパクトはないと思われる。
3)
強まる世界経済の不透明感
米国の失業率が6月に9.2%となった。 更に、住宅価格の低落傾向である。 欧州ではPIIGSの財政破綻、特に、ギリシャに続きEU主要国イタリアやスペイン迄波及しつつあり深刻度が強まっており信用不安を惹き起こし兼ねない。 更に、世界経済の牽引車であった印度と中国はインフレ対策で金融引き締めに大童である。 更に$100を超える原油高は世界経済へはマイナス要因となる。 良い材料が見当たらない。 これらの不透明感はエネルギー需要、引いてはタンカーマーケットにも影響を与えかなえないのである。

4)
結論
3月号での「理解し難い2010年のタンカー市況」を撤回せざるを得ない。 即ち、昨年の後半からの過剰船腹の結果の当然の帰結でありStorage船の存在が過剰船腹の顕在化を遅らせていたのである。 

一方、タンカーには過剰船腹の調整期間のデータがない。 ドライバルカーと違いタンカーは、オイルショックの存在で過剰船腹の解消に要する時間に就いて経験とデ−タがなく過去に論拠した判断が出来ない。 従って、ドライバルカーの過剰船腹の調整期間に論拠せざるを得ないが、その場合、3・4年必要である。 そして、過剰船腹による市況の低落はタンカーもドライバルカーも時を同じくして始まったと見てよさそうである。

資料2、Storage船の推移表

2010年 2011年
7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月

35隻

22隻

17隻

16隻

12隻 14隻 13隻 13隻 19隻 18隻 18隻 16隻 18隻

資料3、VLCC船舶数推移表

  2010年7月 2010年7月 2010年7月
既存隻数 556 100.0% 548

100.0%

557 100.0%

竣工隻数

29 23.2% 55 12隻 14隻 13隻
解体隻数 9 1.6% 13 2.4% 5 0.9
10年竣工 45 8.1%        
11年竣工 96 17.3% 88 16.1%    
12年竣工 44 7.9% 61 11.1% 61 11.0%
      42 7.7% 45 8.1%
計発注残 185 33.3% 191 34.9% 168 30.2%

資料4、2010/2011中国の原油輸入実績

    中東   アフリカ   中南米   その他    
Jan-Jun/10 合計 51,808 43.9%

37,486

31.8% 10,047 8.5% 18,624 15.8% 117,965 100.0%

 

月々

8,585

6,248   1,667   3,104   19,661  
Jul-Dec/10 合計 60,950 50.2% 33,367 27.5% 10,962 9.0% 16,069 13.2% 121,348 100.0%
 

月々

10,158   5,561   1,827   2,678   20,225  
Jan-Apr/11 合計 42,031 49.5% 22,447 26.4% 8,476 10.0% 12,005 14.1% 84,959 100.0%
 

月々

11,091   5,612   2,119   3,001   21,240  
   

 

 

  世界の電力問題に津波となって押寄せた東日本大震災 2011年7月掲載
   

3月11日の東日本大震災は、地震が津波を起こし、その津波が福島第一原発事故を発生させ三重苦を齎しているが、この原発事故が、恰も津波の如く世界の発電業界を揺す大問題となっており歴史的な転換を齎しかねない事態となっている。
世界第1位と2位の人口を抱える中国と印度の高度成長は、海上物流の急増を齎して海運市況を暴騰させ海運業では歓迎されたが、他方、世界経済に大きな歪みを発生させている。 その歪みは原材料と食料の高騰に顕著に現れている。 この中で食料の高騰はチュニジアに端を発した中近東の政治不安の主因であり、最新の広州の暴動も根源は同じだと言われている。 一方の原材料の高騰は、目下の所は鉄鉱石や原料炭等の急騰に目を奪われ勝ちだが、福島原発の事故を切掛けに電力価格の上昇によるエネルギー価格高騰が原材料高騰の主役に躍り出て来る可能性が強まっている。 今回はマンネリの誹りを受けるかもしれないが、6月号に続き東日本大震災の問題を取上げることとする。

   
(一) 原子力発電の世界の動向 − 資料1 参照
1) 全面的廃止
逸早く決定したのがドイツである。 17基の原発のうち休止中の8基を廃棄し、遅くとも2022年まで残り9基を前面廃止が決定。 6月中旬の国民投票で95%の賛成で廃止を決定したイタリアである。 特に、ドイツは産業界から猛烈な反対を受けておりその推移が注目される。但し、両国とも不足分を原子力での電力をフランスから輸入している。
2)
変化ない事を強調しているのが世界第2の原発所有国で発電量の75%を依存し撤退が許されないフランスとフランスに次ぐ第2の34.8%を依存している韓国である。 韓国の場合、経済界出身の大統領が価格競争力を念頭に置いた発言だと言われている。
3)
変化ないとして冷静に対応しているのが英国である。 FTのドイツの原発廃止に方針に産業界からの反発があるのが当然だとして批判的な姿勢と同じである。 日本やシェールガスの開発が進んでいる米国もこの範疇に入る。
4)
政策変更が不可能な国が成長著しいアジア諸国である。 特に、資料1参照、中国は稼動中の原発が13基で、発電量の2%弱しか占めず、建設中や計画決定が77基を抱え、更に110基を新設検討中であり、その代替発電でこれらの計画を見直すことは計画の規模の大きさから言って不可能だと思われる。
    (二)日本の動向
1)
電力と東北電力の電力不足は納得できるとしても関西電力の15%の節電要請である。 この節電要請が原発を持っている北陸や九州まで波及しそうなことである。 これは、定期検査・修理後の再稼動の目途が立たない為と言われているが、これは原発の安全性に就いて政府も電力会社も認可権(再稼動)を持っている当事者の責任回避的行動なのかは解らないが、間違いないことは技術に自信ないことを全世界に発信している様なもので日本の製造業の安全性を含めた技術力に対する尊敬を失い兼ねない。 その上にそれが原因で製造業の生産活動にまで支障を来たしていることは納得し難い。
2)
以上の動きで発生していることは、LNG輸入の急増である。
? 東京電力は真夏の需要期迄4ヶ月間で10 cargoを手配した。
? 中部電力は6月〜8月の3ヶ月に6 cargo のスポット購入をした。
? 10社合計で4月300万トン、5月360万トン追加で購入した。約30%増である。
3)
燃料炭のスポット価格も今年度(4/11-3/12)の豪州炭の価格が、史上最高値の$125.85で決定されたが、スポットの価格はこれを上回る成約は見られない。 従って、燃料炭の需給動向には地震後3ヶ月では変化が余り見られないことを示している。
    (三) 結びに変えて
1) 今回は「想定外」と言う表現が使われ、震災後は1000年に1度(正確には1144年前の869年)の大地震であり津波であると言われた。 然しながら、この様なデーターが存在することは想定外という言葉は適切ではない。 仮にこの言葉を使うとしたら1000年に1度の地震が2011年3月11日に発生することが確率的に想定外であった言い換えるべきである。 仮に、地震後に869年の大地震が判明したとしたら「調査漏れ」のほうが正しい表現である。
2)
メルトダウンが、FT.等の外紙は事故の3日後の14日(月)には使用していた。 それにも拘らず、2ヶ月余り公表されなかったことは戦前の報道規制を思い出させ歓迎したくない事である。 日本に駐留中の外国人35万人(未確認情報)の退去を奇異に感じたが、この方が正しい情報を得て,過剰反応もあるかもしれないが、適切な判断を下していたと言ってよさそうである。
3)

原子力発電はBWR型(Boiling Water Reactors=沸騰水型原子炉マーク1型)で東京電力と東北電力を含め日本で50%以上使用されている。 この発電機それ自体問題はない(The design was not the problem per se)と言われている。 地震により冷却設備の破損であると言われている。 理由が明確であれば修理・検査後に再稼動可能な筈である。 さもないと、日本の原発の設備の輸出も韓国・中国の後塵を拝することになりかねず憂慮される。 
再稼動しないのは今回の災害の深刻さを恐れての責任回避以外の何物でもないはないと言われても仕方がない。 適切とは言い難いかもしれないが、海運の事件の責任回避の例としては、オイルショック発生の原因を解明しないで再発だけを恐れタンカーに投資を差し控えたのと同じである。

4)

海運業の場合、廃棄処分時にスクラップ(時価は約$500/MT)として販売可能である。それが最後の収入となるが、その収入を予想して竣工後から処分までのコストを下げる仕組みも可能である。
処が、海運とは逆に原発の廃棄処分費は多額になりそうである。 この廃棄処分が事前に電力料金に組み込まれているのかかが心配である。 もし組み込まれてなければ電力コストの見直しが必要かもしれない。 専門外ながら福島第一原発の廃棄にかなりの費用が掛かりそうで、この廃棄費用を後の世代にツケとして残す結果となりそうだからである。


   

 

 

  アジアの電力問題に津波となって押寄せた東日本大震災 2011年6月掲載
   

21世紀になってから100年単位の事件が多発している。世界経済に関しては、リーマンショック時に100年に一度の大不況と言われた。 これは世界大恐慌以来の不況と言う意味であった。 他方、海運に関しても2003年に端を発した中国特需によるブームも100年に一度といわれた。 これは第一次世界大戦の海運ブーム以来ということを意味する。 
以上の100年単位では短すぎると嘲笑うかのごとく日本史上では1000年に一度(平安時代の869年以来)と言われ、マグニチュード9.0の東日本の大地震が3月11日午後に発生した。地震と津波と言う従来からの災害に加え、原子力発電所の事故と言う3重苦の災害に見舞われた。

今回の原子力発電所の事故は、エネルギー政策の大転回を齎す可能性もがある。 その場合、ドライバルカーとタンカー(含むLNG船)に影響を与えることとなる。 特に、燃料炭の海上輸送量に大きな影響を与えることとなる。
今回はこの大地震に関連したWall Street Journalの3月14日付けのアジアの原子力発電特集記事を紹介し、これにコメントを加えることとする。 この特集記事が震災発生日の金曜日から3日後の月曜日に掲載されたことに敬意を表したい。
尚、海事図書館の再開が6月1日に連連れ込んでいるため海運の専門誌の閲覧が出来ないが、興味ある記事があれば日を改めて紹介する事とする。

   
(一) Asia watches Japan’s nuclear woes (The Wall Street Journal on 14th March)
概略は次の通り
1) 原子力発電所の実態と計画
i)

稼動中(含む休止)の原子力発電所
中国13、日本55、韓国21、印度20、パキスタン2. 合計102基

ii) 計画中(含む建設中)
中国77、印度23、日本14、韓国11、パキスタン3、ベトナム、バングラディッシュ、インドネシア、各2. 合計134
2)
東日本大震災後の各国の動き
原子力発電に関しては、放射能漏れのニュースは反対者に力を与えている。 選挙で選ばれたインド・インドネシア・タイ等の政府は環境保護団体による反対が強くなっている。一方、中国・ベトナム等の民主主義度が小さい国々(less-democratic countries)では、経済成長維持とCO2削減の目標達成のため原子力発電の重要性は変わらないとして、計画縮小の動きは殆どない。
i)

従来から消極的な国 − インドネシアとフィリッピン
前者は数年前の大地震(マグネチュード9.1)により国内最初の原子力発電所の計画を延期した。 フィリッピンは1984年に20億ドルで建設された620メガワットの発電所を安全上の理由で廃棄した。

ii)

積極的な国
・タイは、国営電力会社が2020年までに1,000メガワット(メガ=100万)を計画中で、更に、4箇所での計画を検討中。 但し、タイ政府は今回の事故は今後の計画決定に強い影響を与えると語り、戸惑いを隠していない。
・ベトナムは、120億ドルの予算で4,000メガワットの2の発電所の建設を2014年完成で年計画中。 政府の計画は15ギガワット(ギガ=10億)の建設であるが、最終決定には至ってない。
・中国は、原子量発電の能力を現在の10.8ギガワット(総発電量の約1%)を2020年までに86ギガワットへ増設の計画があり、その重要性には変わりがない。 尚、中国の原子力の拡大は東芝に買収されたWestinghouse社の第3世代の発電方式の輸入に頼っている。 今回の事故でもんだいとなった冷却システムの改善されたものとなると思われる。 

3)
アジア諸国における原子力発電重要性
アジア特に、東南アジア諸国の電力需要は2030年には3倍となると予想されている。 一方、一部の天然ガス油田(インドネシア?) の枯渇やタイでの新しい石炭火力建設への環境保護団体の反対もあり、原子力発電の拡大なしでは経済成長は困難である。 即ち、アジア諸国の経済の成長は、エネルギー需要急増に応えエネルギー源の多様化が必要となっている。 従来の石油・天然ガス・石炭に加え原子力発電への投資増が成長を維持するには避けられない。
    (二)ドライバルカー市況への影響は燃料炭から
需要状況は価格に反映されるが、目下の状況は次の通りでスポット価格は需要急減で頭の重い展開となっている。
1)
今年度(4/11-3/12)の豪州炭の価格が、震災後にこれまで最高値であるリーマンショックの08年の$120を超え、史上最高値の$125.85で決定された。 この価格は昨年度の価格$97.75の32.8%アップである。
2)
豪州の洪水の影響で、1月に$135まで上昇した豪州炭のスポット価格は、震災後には$119〜$125のベンチ価格である$125.85を超えない水準で推移した。 このスポット価格安定の背景は、主に東北電力と東京電力の不可抗力宣言による一時的な需要減によるものである。
被害の実態は、東北電力が原町発電所他で400万KW、 東京電力が常磐那珂発電所他で500万KWが2/3ヶ月間停止によるものである。
    (三) 結びに変えて
1) 燃料炭とLNGの世界最大の輸入国である日本で目下の所目立つのは後者のLNGの輸入増の動きであるが、東北電力と東京電力の石炭発電所が再稼動した場合、他の電力会社の輸入増と合い俟った震災前以上の石炭が輸入されるものと思われる。 ドライバルカー市況にはプラス要因となる。 但し、現在の低落したマーケットの救世主になりえるかの問題点は、過去の燃料炭の役割の実績から見ると過度の期待は出来ないと思われる。
2)
ドイツが3分の1の原子力発電所を一時休止したこともあり、石炭の輸入増は欧州が早いと言えそうである。 この物流増の前に、投機筋のファンドが石炭に流入する可能性がある。 一月の豪州の洪水により原料炭の暴騰があったが、脱原子力による燃料炭高騰の再来があっても不思議ではなさそうである。
3)
(一)のアジアの原子力発電所の計画を見る限りに於いては、計画自体が後れることはあっても実施せざるをえないと思われる。 仮に計画が遅れた場合、石炭発電が中心になると思われるが、世界最大の燃料炭の輸出国インドネシアに隣接しており船腹需要増の貢献度には限界があると思われる。
4)
その他
i)

神戸大地震が神戸港のハブ港としての地位の低落を齎したが、今回は東北を含め地方のローカル港は韓国の釜山のハブ港の衛星港として組み込まれた後だけに大きな変化は無かった。

ii)

石油製品の海上輸送の場合、製油所自体がハブ港の役割を担っている。 震災を機に石油製品が韓国から東北の日本海側に輸入されることを心配したが、変化は無かった。

iii)

今回の震災で最大の問題は自動車等の部品の供給網(サプライチェーン)の一部損傷で最終商品の減産が続き貿易収支にまで影響を及ぼしている。 ジャストインタイム方式の一部見直し等の新たな安定対策の必要性を示唆しているようである。

5)
1000年に一度で戦後最大の災害であり、被災者に対してお悔やみを申し上げると共に、3月14日のFTが1995年の神戸大地震後の復興の例を取上げ”History shows rebuilding can spur economy”と述べている。最後にこのFTの表題を付け加えて置きたいと思います。
   

 

 

  海運市場の自律性に就いて 2011年5月掲載
   

4月号の原稿で、惨憺たるケープサイズバルカーの市況は「オイルショック後のタンカーとは違い、市場の自律性は保持されており、通常の調整となんら変わりがないと受け止めるべきである。」と結びで申し上げた。
今回はオイルショック後、(二)自律性を喪失したタンカーマーケットと喪失していないドライバルカー、特に、(三)ケープサイズバルカーとを対比し、コメントを加える形で整理・分析することとする。 尚、ここで取上げる市場の自律性とは船腹過剰・運賃低落に対する市場の調整機能ことであり、運賃上昇に伴う投資増は資本の論理(金融ファンドの性向)の具現であり自律性の一部を担うかもしれないが、ここでは取上げないこととする。 

但し、1973年のオイルショックから28年経過していることに加え海事図書館が震災で使用不能となったので資料の裏づけが出来なくなり、古い記憶に頼らざるを得ないことで正確さがやや欠けることを予め承知置き願う。
   
(一) 市場の自律性とは
自律性とは「自分で自分の行為を制御することである」(三省堂辞典)。 これを海運市場に言い換えれば、海運を含めた市況産業で顕著に現れる「市況の上下運動が人為を掛けなくても自己完結的に調整し市場の健全性を維持する」ことである。
1) 周知の事ながら、通常の海運市況は下記の様に循環する。
i)

「運賃上昇」は「船舶への投資増」を齎し、「船腹供給増」となり最終的に「過剰船腹」となり「運賃下落」となる。 この推移は不動産投資と類似している。
「運賃下落」は市場からの「船舶の撤退」と「投資減」等により「供給圧力低下」更に進むと「船腹供給不足」となり「運賃上昇」へと回帰する。

ii) 海運市況は全船腹の10%程度のフリー船のスポット成約により水準が決定される。 これは船腹の需給が10%程度の船舶に凝縮される形で成約される為、不安定で実態以上の楽観と悲観論を醸成し易い。 この中で常に発生する問題なのが、高収益期待の投機的投資増である。 これは症懲りなく繰り返される海運業の煩悩でもある。 
iii) 過剰船腹の調整機能は船腹供給側から発生するが、2003年からの中国特需の様に需要側に変化がある場合は、上下の運動の高低と波長に影響を与えることとなる。
2)

海運市場の自律的調整は、市況低落時に機能し下記の動きをする。
係船・船舶のスクラップ・既存船の他船種への改装・発注船の船種変更・新造船のキャンセル・過剰船腹の度合いによっては造船業の縮小等がある。

    (二) 自律性喪失オイルショック後のVLCCて
1)
資産価値に就いて
i)

オイルショック前の新造船の船価は125/130億円(3,472/3,611万ドル)まで上昇したが、オイルショック後半値となり、第2次オイルショック後には1/4まで暴落した。 その当時のロンドンの金融市場ではVLCCの暴落で信用不安を齎すのではないかといわれた。

ii)

1985年頃、第一/二次オイルショック後、初めてVLCCの中古へ投資したのがZodiacであった。 購入価格は300万ドル前後.であった。 3年後には1,000万ドルで一部売却された。 即ち、3年程度で700万ドルの売船益を計上したこととなる。
余談ながら、海運の傭船を担当していた立場で”安い時に買う”と言う基本原則に忠実で、その決断力に畏敬の念を持ったことを記憶している。

iii) オイルショックによるVLCCの過剰船腹の解消の兆しは、新造船の発注の動きが出た22年後の1995年頃であり、そして、完全解消は2000年であったと思われる。
2)
スクラップ価格に就いて
i)

オイルショックはVLCCを無用の長物と化した。 従って、スクラップ化への圧力が強く$100/dltを下回って売船された。 記憶が正しければ最安値は$98/ldtであった。

3)
その他
i)

FFAに就いては、買い手不在のためタンカーのFFAは成立せず、10年程度遅れててスタートすることとなった。

ii)

新規傭船も成立せず、その当時傭船料を聴いた所、マイナス$1,500dailyであった。 これは係船を引き受けるためのコストと言われた。

    (三) 自律性を維持しているケープサイズバルカーとの対比とコメント
1) 資産価値に就いて
i)

新造船価格はリーマンショック直前のピーク時には1億400万ドルまで上昇した。 その後、低落を続け最新の船価は6,400万ドルとなっている。

ii)

コメントとしては、オイルショック後20数年間新造船の制約が無かったVLCCと比較すると根本的な差となっている。 但し、1億400万ドルの水準はリーマンショック後のVLCCの価格とほぼ同じであり上がり過ぎであった。 最新の6,400万ドルは市況低落時にありうる想定内価格と言える。 今後の推移に就いては、従来とは違い、海運市況だけではなく鉄鋼原料の高騰に伴う厚板等の鋼材のコストアップと市況の鬩合いとなる。

2)
スクラップ価格に就いて
i)

現在は$500前後の水準を維持している。 これは中国の鋼材需要が依然として活発であり、原料炭と鉄鉱石価格の高騰により鋼材価格の高止まりの予想によるものである

ii)

コメントとしては、言うまでも無くドライ市況はスクラップがラッシュするほど深刻ではない。

3)
その他
i)

FFAに就いては、過日の勢いはなく心理的な面が中心であるが、ドライバルカーのFFAはスポット市況に影響を与えている。 FFAも健在である。

ii)

最新の傭船料は1年物で$15,000dailyである。 高い新造船価格では安過ぎる水準ではあるが、中国特需前ではコスト並みである。

    (四) 結びに変えて
1) 自律性喪失したVLCCは
i)

調整期間は、VLCCの船齢が若かったこともあり、物理的な耐用年数に近い20年以上の時間が必要であった。

ii)

世に言う景気対策で用いられる金融緩和で金利が下がっても国家の財政資金を使っての需要喚起策(石油備蓄)があっても微動もせず、新規の投資も壊滅状況の事態である。    
俗言で言い換えれば「泣いても喚いても流れを変えることは不可能」であった。

2)

現在のドライバルカーは

i)

海運市況のサイクルの市況高騰後には避けられない調整時期に突入しただけなのである。 リーマンショック前は勿論のこと、後の市況の予測は、慎重派が北京のオリンピックまでであり、強気派が上海万博まであった。結果は強気派の予想が正しかっただけに過ぎない。

ii)

現在の市況の低迷が短期で終わるとしたら、海運産業だけが投資効率が突出したこととなる。 それでも継続すると見るならば、それはかっての日本経済の不動産神話やサブプライムローンの安全神話がリーマンショックを発生させたのと同じ轍を踏むこととなりかねない。

iii)

中国特需の巨大さは、この調整期間が不必要で存在しえないと言う誤った雰囲気を醸成したことは間違いないが、絶対に避けては通れないものである。

3)

結 論
海運市場が自律性を喪失していない通常の調整期間は3/4年必要である。 過剰船腹でのBDIの1500の低水準は憂慮される事態で、楽観は許されないかもしれないが、今回も3/4年の調整期間があれば十分の筈である。 但し、この様な事態は海運業界にとっては数多く経験しており準備万端であり、想定の範囲内である筈である。 心配があるとしたら中国特需後に経営規模を大きくした新興の海運企業である。

   

 

 

  惨憺たるドライバルカーの今後の「展望」 2011年4月掲載
    2月4日にBDIが1,043へと暴落した。 リーマンショック時の金融危機ならいざ知らず、平時の状態でのこの水準は信じ難い水準である。 BDIが導入された1985年1月時点は、プラザ合意以前であり、為替は1ドル308円の時代であった。 当時の対円で比較するとドルは約1/3となっている。従って、BDIは当時の350円程度の水準に暴落していることなる、正しく暴落と言えよう。
 今回は、ドライバルカー、特にBDIを暴落させているケープサイズバルカーが現在抱えている問題点を取上げそれにコメントする形で「展望」を試みることとする。
  尚、2月22日のLL(Lloyd’s List)のMr. Tom Leanderの”Dry Bulk rates head for cataclysmic correction”の興味あるレポートをも参考にしながら取り纏めることとする。
   
(一) 供給過剰の問題
1) 資料1参照、前年の純増が約134隻であったのが、この1年で203隻の純増となった。 更に、2011年の竣工予定が305隻あり、スクラップの急増予測とキャンセルや竣工遅延等でどの程度の純増となるのか未確定要素が多いが、200隻を下回ることはないと思われる。
2)
2010年危機説は、ケープサイズが突出してのドライバルカーの大量発注で供給過剰による市況低落の予想であった。 2010年の203隻の純増を吸収できず2011年にずれ込む形で2010年危機説が現実化したと見るべきである。
3)

LL(Lloyd’ List)の2月22日号でLeander氏はドライバルクの運賃は重大な調整(cataclysmic correction)の方向へ進んでいると述べ、更に、Ms. Janet Lewis(Macquarie Research, Tokyo)の意見を次の通り紹介している。
“BDIの平均指数を2011年1,300、2012年1,400になりそうであり、2013年までは本格的な回復とはならないであろう。 このIndexの水準は、2011年船腹の3.5%、2012年6%、2013年2%程度のスクラップがひつようである。 但し、この計算がどの様な根拠でこのなされたかは不明。

4)

2年連続20%以上の200隻を超える純増を市場が吸収することは不可能といわざるを得ない。 スクラップの大幅増が望まれる。 但し、バングラディッシュが10ヶ月振りに解撤の許可が出たが、ヤード能力から見て無理がありそうである。

    (二) 需要側の問題て
1)
今回の暴落を年初から6週間に亘る豪州の洪水が最大の理由であり、ケープサイズ50/60航海が減少したとして暴落の主因とする意見が船主側にあったが、上述の Lewis氏は希望的観測(wishful thinking)であると否定している。 事実、洪水の影響が終わっても回復には至らず、同氏の意見を否定できない状態である。
2)
10年の中国の鉄鉱石の輸入量が1.4%減となったにも拘らず、10月ケープサイズの運賃が上昇した時、上昇の原因を鉄鉱石山元3社の人為的な操作による可能性がある(11月号参照)述べたが、この種の人為的な操作は流れに逆らった行為であり、その反動は大きくなる可能性が高い。 従って、低落を増幅させたと理解すべきである。
3)
洪水の結果原料炭の価格が暴騰し、11年度の第一四半期の価格は、$226から47%アップの史上最高値$330となった。 鉄鉱石を加え原料炭の価格急騰は、鋼材の価格上昇に伴う需要減と粗鋼増産の活気に冷水を掛けた事となっても不思議ではない。
4)
09年の1億5,000万トンの輸入鉄鉱石が隠匿されている可能性がある(10年5月号参照)と述べたが、10年の6,190万トンの粗鋼増産が国内産の鉄鉱石で賄われたとは考え難く、隠匿されていた輸入鉄鉱石の一部を取崩しで1.4%の輸入減となったと思われる。従って、残存の輸入鉱石が市況の足を引っ張る可能もある。
5)
ファンダメンタル面
(i)  市場の環境は長期休暇前の攻防に現れることが多いが、長期休暇前にどちら側に危機意識が強いのかが明瞭になり、その後の市況を占うことがある程度可能である。中国の春節の長期休暇の前は傭船者冷静であった、その後の市況も当然のことながら傭船者有利は変わらず暴落が継続した。 ファンダメンタルの悪さを表している。
(ii) 鋼材の価格に関しては大きな変化は見られない。 原料価格の上昇を販売にどの程度ヘッジできるかによる。 尚、日本のミルから韓国造船所へ造船用厚板の価格を$1,000で申し入れ中との事。 船舶のスクラップ価格にも影響を与える為、結果が注目される。
    (三) 世界の経済情勢に就いては、1月号「2011年の留意点」参照
、この3ヶ月間で追記すべきことは下記の2件である

1) この3ヶ月での最大の変動はチュニジヤに端を発したアラブ諸国の政治不安である。  インフレに伴う食料の上昇も一因であるとであると言われている。 この社会不安がLNGの最大の輸出国のカタールやサウジなどの産油国へ拡大すれば、オイルショック類似の大問題となる可能性がある。
2)
中国も同じ食糧の値上がりの問題を抱えており金融引き締め中である。 中国の食料は「1月現在、公式には5%となっているが、品物によっては20%上昇」と言われている。 その沈静化の為に3回に及ぶ金利引き上げを行ったが、これは経済をも沈静化させ成長率、それと密接な関係にある粗鋼増産の鈍化を齎すこととなる可能性がある。
3)
Valeの400,000dwt型を含めVLOOの大量発注は資源関連へのバブル的投資だと考えた方が判り易いと思われる。 現在の市況は、他のコモディティに先立ち、大量発注に伴う供給圧力で心理的にバブルが弾けた状態となっていると考えられない事もない。
    (四) 結びに変えて
1) 現在の惨憺たる市況は、過剰船腹に由来していると断言してよさそうである。 そうであれば「厳しい調整」、即ち、頭書に述べた「cataclysmic correction」となる。 その厳しさを緩和するのは、言うまでも無くスクラップの量と中国の粗鋼増産量である。
2)

最後に付言して置きたいことは、オイルショック後のタンカーとは違い、市場の自律性は保持されており、通常の調整となんら変わりがないと受け止めるべきである。 但し、途中の2009年信用不安による暴落はあったが、2003年からの最長で最高のブームの宴のあとであり、時間と痛みは通常よりは長く厳しいと思われる。

資料1Cape-sizeBC as per Clarkson
 

9-Jan

10-Dec

Dec-11

Orrder details
Fleet 821 955 1158

 

Delivery

*30

112

207

 
*Convert unknow 9 12 2011:305

Scrap

*3

9 16 2012+ : 513

Order

*615 733

818

Total : 818
* as on end Nov

資料2 スクラップ実績

As per Clarkson

 

1stQ

2ndQ

3rdQ

4thQ

Total(1-12)

2008 0 0 0 3

3

2009 5 2 0 2 9
2010 2 2 9 9 18