低迷続くタンカー市況に就いて 2010年11月掲載
   

VLCCのマーケットは、今年前半の高水準とは違い7月を境に低迷が始まり、現在(10月15日現在)WS40 台迄暴落しTCE(C/B) も$10,000を切り船舶管理費(船員費、船舶の修理・維持費)をも下回り兼ねない水準となっている。 言い換えれば、係船点、即ち、船員を下船させ係留することを検討せざるをえない水準となっている。

一方、9月号で後半のマーケットに就いては当時(8月13日)から低迷が始まってはいたが、船腹の純増が半年で9隻(1.7%)であった事SHの市場からの撤退時期が迫っている事で楽観的な見方をし、「現在WS60前後の低迷したマーケットが継続する事態となった場合は、「取上げた要因が悪化した時か、新たな悪い要因が加わった時か、世界経済が2番底になった時である」と述べている。 処が、現実は9月号の楽観的な予想とは大差が発生している。 今回は、前半と7月以降との大差の実体の背景を整理・分析することとする。
   
(一) 船腹(VLCC)供給面
1) 船腹の純増
SSYのMonthly Reviewによると7月1日から2ヶ月間で5隻の純増となっている。 今年前半(1月〜6月)の純増9隻と合計すると14隻となる。 やや、増加のテンポが速くなってはいるが、予想より少なく7月以降の暴落への影響は警備であった。 尚、今年竣工する発注残は9月1日現在29隻であり、スクラップなしで合計すると43隻となる。
2)

Storage船の推移(月末)− 資料1参照
6月末の47隻から急減し、10月上旬との比較では21隻減となっている。 純増14隻と合計すると35隻が新たな供給増となっている。

3)

Storage船の減少が急激で、VLCCのSH船の市場からの撤退が間に合わず供給過剰になったことと今後の新造船の継続的な竣工で供給圧力が根強い状況にある。

    (二) 船腹需要面
1)
スポット制約の状況 − 資料2参照
i)

短期間のデータで輸送量の僅かな比率を占めるスッポト制約で全体の輸送動向を把握するには問題があるが、West向けの月間の制約数が7/9月は14航海で、前半より4.4航海減少している。 一方、East向けは約2倍の9航海増加しており、West向けの減少を軽く穴埋めしている。 スポットの制約状況は7月以降の低迷の要因とはなっていない。

ii) West向けの制約減の理由は、Storage船の原油がWestで売却され、その分制約数が減少したものと推測される。
2)
COAの増加と市況の低落に就いて − 資料2参照
i)

制約数からCOA制約差し引いても前半が81.2隻、7月以降が80.7と大きな変化が無く、7月以降の低迷の要因とはなっていない。

ii) 海上運賃は、船腹の需給により決定されるが、単純に決定されるのであれば、運賃の引合いのないCOAの制約増でも需要減とはならず問題とはならない。 処が、運賃決定のもう一つの要因である心理面には影響を与えることは否定できない。 船主側の引合い不成立に伴う危機意識は、制約不成立後の無為滞船と事後の市況低落への恐れから発生する。   COAの制約数が、熱気を伴うスポット引合いへその立場を変えれば、制約機会の増加で上記の二つの危機意識が薄れ強気になれるのは間違いない。 但し、いかなる状況でもファンダメンタルには勝てず、それはコップの中の争いに過ぎない。 現在の低迷を強める作用があっても、根本的な要因とはなり難い。
3)
中国の原油の輸入量に就いて − 資料3参照
今年前半の原油輸入量(年率へ換算)は対前年平均比44.2%の大幅増となり前半の高水準の市況の要因となったが、7月以降は17.5%増と増加率が急減している。 これが前半と7月以降の運賃の格差発生の要因の一つである。
4)
中国の原油輸入先に就いて − 資料3参照
i)

近距離ソースである中近東原油の比率が前半の3分の1強の35.2%から半分弱の49.2%と、大幅に増えたことである。

ii) 最も遠距離ソースの中南米の原油の比率が3三分の1弱の32.4%から1割へ急減したことである。
iii) 以上の通り、予想外のトンマイル減少が発生した。 この原油輸入先の変化は、電力用の重質油の需要減理由かもしれない。 いずれにしても、この事態の予測は不可能。
    (三) 結び − 9月号の予想を悪化させた三大要因
7月以降現在までのVLCCの低迷の原因を結びとして整理することとする
1) Storage船の急減。
i)

予想以上のテンポで急減した。 その為、Storage 用に傭船されていたSH船がScrap Yardへ直行せずDH船とともに市場へ参入したことで船腹過剰を強めた。

ii) Storageの減少は、その分スポット貨物の減となる。 これはWest向けのスポット船 の制約減として顕在化していると思われる。 これもスポット船の制約減、即ち、需要減で船腹過剰の一因となった。
iii) 以上Storage船急減が、現在の低迷の要因の一つである。
2)
中国の原油輸入国の予想以上の変化 
トンマイルが短距離化 中近東原油の比重は3分の1強が半分弱となり、中南米原油の比率が3分の1から1割へ低下した。このトンマイルの急減が、現在の低迷の二つ目の要因である。
3)
中国の原油輸入増加率の急低下
今年の前半が対前年比44%増と驚異的に伸びたが反動的に7月以降17%増と急落した。 これが7月以降の低迷三要因の最後の一つである。
4)

最後にSHの退場の時期が迫っている事と市況の低迷がスクラップ化を増加させ、過剰船腹緩和の動きが現れる筈である。世界経済の2番底が発生しない限り過度の心配は避けるべきで、心理が市況を悪化させ兼ねないからである。

   

 

  エルニーニョからラニーニャへ 2010年10月掲載
   

海運業にとって、穀物とエネルギーの需給動向はドライバルカーやタンカーに大きな影響を与える為、最近の異常気象を無視することは出来ない。 その為に参考資料として過去一年間で発生した気象現象を整理して置く必要がある。 更に、今後どの様に展開し海運市況へどの様に影響を与えるのかも重要課題である。
今回は、8月17日付けのFT(Financial Time)の記事とSSYのShipping Monthly Reviewの 8月号を参考にしながら二つの課題に就いて取纏めることする。

   
(一) プロローグ
1) 今年は5月頃からエルニーニョからラニーニャへ移行したと報ぜられた。 エルニーニョとは太平洋の東のペルー沖の海水温度が上昇に伴いアンチョビが不漁となることで100年程前にペルーの漁民により名づけられた気候現象である。 これは、太平洋の海水温度が、東が高温となり西の東南アジアの海域が低温となることである。一方、ラニーニャは反対でペルー沖が低温となり西側が高温となる。
2)

海面の高温帯の移動現象は、パキスタンの大洪水等の様に各地の異常気象を見る限りに於いて太平洋だけではなく大西洋やインド洋でも略同時期に同様に発生している様に思われる。

3)

日本の場合、今回この影響が比較的に判りやすく現れた。 エルニーニョの暖冬傾向(夏は冷夏となる)から4月大雪の多発(太平洋中部の海水温度の上昇によりその区域に低気圧が多発し寒波を引き込んだと言われた)から短い春を経由して観測史上始まって以来の113年間で記録的な異常高温となった。

4)

偏西風の蛇行説もあり単純にエルニーニョとラニーニャの所為だけだとは断定できないかもしれないが、日本の猛暑の例を見るまでもなく現在の激しい気候変動は、恐らく地球の温暖化が増幅させているものと推測される。

    (二) 異常気象
1)
エルニーニョ下の異常気象
i)

中国西南部の異常渇水である。 これは中国による一般炭の輸入増でドライバルクに影響を与えた。 顕著ではないが、電力用の中南米の重質原油の輸入増となりタンカーにもプラスの影響を与えたと思われる。

ii) 飼料として存在感がなくなり話題性はないが、ペルー沖の海水温度上昇し、アンチョビが不漁となった筈である。 これは餌となるプランクトンを多く含有している冷水が海面へ上昇できず、アンチョビが集まらないことによるものである。
2)
ラニーニョ発生に伴う異常気象
i)

「ラニーニャ発生の5月からの旱魃によりロシアに穀物不作と森林火災の多発を齎している。」(SSY Aug/10)

ii) ロシア政府は8月15日から12月末まで小麦の輸出を禁止した。 その後も降雨が少なく「冬小麦の作付けが遅れる懸念が生まれ出てきている」(日経8/Sep/10)でロシアの禁輸が長引くこととなりそうで穀物全体の価格上昇へ弾みをつけている。 既に小麦価格は、9月11日現在1ブッシェル$7.38と6月比較約3ドル上昇している。
iii) 海運市況には関係ないが、インド洋の西側のパキスタンが8月に大洪水が発生し、日本も自衛隊を派遣するほどの緊急事態となっている。
iv) 海運市況には同じく関係ないが、日本近海の秋刀魚も不漁となっている。 これもラニーニャに伴う西太平洋の海水温度の高温化が理由の一つでアンチョビ不漁と同じく海水の上下の対流できないことが理由であると推測可能である。
3)
今後の参考資料として記憶に留めて置く気象現象
i)

エルニーニョ下では中国西南部は旱魃で一般炭の輸入増の可能性が高いこと

ii) ラニーニャ下で、中国南西部で旱魃を穴埋めするかのごとく土石流が発生するほどどの豪雨に見舞われた。 ロシア・ウクライナ等の旱魃で穀物の海上物流増となる可能性があること。
iii) 海水温度の上昇で大西洋の西側の「カリブ湾でハリケーンが多発(more active)し短期的に原油価格と天然ガスの価格を上昇させるが、北半球の温暖な冬で暖房用の需要減となる可能性が高い」(FT 17/Aug/10)。 太平洋の西端では、台湾の近海で小型の台風が多発している。 日本の冬の気候は寒い冬となると思われる。
iv) 豪州では東部の石炭積出港は多雨で混乱が発生する可能性がある。 他方インド洋に面した鉄鉱石の積出港は雨が少なく順調に推移しそうである。
    (三) FT(Financial Time)の8月17日の記事(価格に対する資料)の概略
1) 小麦: アルゼンチンが不作になりそうである。 豪州は東部が降雨量の増加で増産、但し、西部(インド洋の東)は乾燥で不作となりそうである。
2)

トウモロコシ: アルゼンチンとブラジル南部が乾燥で減産となる可能性が強い。 但し、南アの増産で部分的に穴埋め可能。

3)

大豆: トウモロコシ同様、アルゼンチンとブラジル南部が乾燥で減産となるが、ブラジル中部の豊作で穴埋めが可能かもしれない。

4)

原油・LNG: カリブ海(大西洋の西端)のハリケーンの当たり年となる可能性がある為、価格上昇の可能性が高い。

5)

アルゼンチンを除き、南半球の豪州・南アの増産で穀物全体が上昇することにはやや懐疑的である。

    (四) エピローグ
1) ドライ市況への影響
i)
SSY の8月号の概略

●08/09年度の小麦のロシアの主要輸出先は中近東600万トン、北アフリカ580万トン
●代替の輸出国は豪州100万トン、EU100万トン、残りが北米となろう。
●小麦価格の上昇で、09/10年度の世界の海上荷動量が1億2,450万トンから約600万トン減の意億1,850万トンとなろう。 小麦は各国とも国民の生命を維持する最重要の穀物であり、最貧国の一部の国を除き単年度で餓死者が発生しないよう備蓄も進んでいる筈である。 即ち、小麦を輸入するために狂奔することにはならず、価格上昇が輸入減を齎し市況へのインパクトは小さいと思われる。

ii) 穀物がドライバルカーへ影響を与えた例として下記の2例があり、小麦不作と言う唯一の理由で、市況が高騰・暴騰した例がない

●1987/89年に同じくロシアの小麦不作が発生したが、当時は日本の経済の絶頂期でドライバルカーへの影響が強かった日本の粗鋼も増産となり印象が薄かった。
●1995年の中国がトウモロコシ輸入国へ転落した。 中国から輸入していた近隣の日韓は、米国に頼らざるを得ずトンマイルを急増させ市況を上昇させた。

iii) ロシアによる小麦禁輸の結論としては、船主にとっては良い材料ではあるが、穀物の問題は1・2年の短期で終了することと中国の旱魃解消で一般炭の輸入増の勢いが鈍化することも考えられ過度の期待は禁物である。 但し、資源の価格上昇に頭打ちの状況が生まれている所に今回のロシアによる小麦の輸出禁止は、ヘッジファンド新たなる挑戦の機会を与えたと言えそうである。
2)

短期間の乏しい資料をベースにしていること、しかも類推が多いこと等で科学的とは言い難く気象学の専門家からお叱りを受けても仕方がないと思う。
しかしながら、以上の通りエルニーニョやラニーニャの発生は海運市況へ影響を与えるだけではなく混乱を齎す故、不定期船業(タンカー・ドライバルカー)の関係者としては、
● 何故発生するのか
●発生の予知が可能か を専門家に聞きたい所である。

   

 

  2010年の前半のタンカーマーケットに就いて 2010年9月掲載
   

2010年前半のタンカーマーケットは、VLCCの「MEG/Japanのスポットの平均運賃WS87」(5/Jul/10海事プレス)は他部門と比較して満足すべき水準であった。 WS87は2003年に始まった中国の高度成長に伴う史上最高のタンカー市況の真最中の2006年のWS88に次ぐ水準であり、リーマンショックの後遺症を完全に脱却したと思える高運賃であった。 今回は、8月号のドライバルカーに続き、タンカーの上期の堅調なマーケットの背景を整理することとする。 但し、6月号の内容と一部重複し新鮮味を書くことになり兼ねないこと予め承知置き願いたい。

   
(一) タンカー(VLCC)の上半期の高運賃に就いて
1) この上半期の市況推移の特徴に就いては、資料1の過去一年の市況推移表参照、1月より上昇、その後も高位安定で推移している。
2)
堅調の背景 − 需要側
i)

主要各国の原油輸入量の対前年との比較 資料2参照
タンカー市況堅調の要因は、対前年比で欧米の減少分を中国が穴埋めしたからである。但し、2007年対比ではマイナス1.62mbpdであり、本格的な回復とはいえない。

ii) 中国の輸入先別の明細  遠距離ソースのアフリカ・中南米が約40%を占めている。このことは中国の輸入増はトンマイルを飛躍的に増加させることを意味する。 同国の輸入量の急増、そしてトンマイルを加速的増加が上期のタンカー堅調の最大の要因であった。 スポット比率の多さと相俟って、その影響度が改めて認識される。
iii) 印度の存在
中近東に近いと言うことで、タンカーマーケットへの影響は中国と比較して小さく取り扱いが地味となっているが、製油設備が現存1億7,800万トンから2年以内に2億5,600万トンに増設する計画があり、更に、アフリカ積みは勿論のことカリブ積みの原油の引き合いも散見され無視できない存在となっている。 尚、4月の輸入量が70%急増したとの情報があり、上期のタンカーマーケットにかなりの影響を与えている。
3)
堅調の背景 − 供給側
i)

資料4 VLCC隻数の推移参照、上半期の増加隻数が僅か9隻であったことで供給圧力が小さかった。

ii) SHの動向に就いて、その稼動隻数に就いては種々の説があり、正確な数字は掴み難いが、年初は80隻程度あったのが、7月には「20隻減となっている。その内訳は、スクラップが12隻(その後2隻増で14隻)、改装が8隻で約20隻程度は減少」(海事プレス20/July)と報じられた。 又、ロンドンのGibson社は、7月現在53隻で(全VLCCの10%程度)そのうち33隻がMEGとFE に傭船されている。
iii) Storage船に就いて
Gibson社報告では、2月には22隻であったのが、6月末には36隻となっている。 このStorage船のタンカーマーケットに対する影響は明確ではないが、Storage用の傭船需要はタンカーマーケットが安い時と原油価格も軟化時での値上がり待ちの時である。 従って、運賃の低落を緩和する機能はあるものと思われる。 逆に、運賃高騰時(時間差はあるが、価格も上昇することが多い)はStorageを取り止める為、船腹供給増となり市況にはマイナス要因ではあるが、上昇時はこの影響は微々たるものであろう。
    (二) 結びに替えて
1)
8月13日現在のタンカーマーケットは中近東/シンガポールでWS57.5、TCE$20,000弱となっている。
i)

後半の新造船の竣工が40隻となっており、加え、2011年は73隻と無視出来ないこと。

ii) 季節的に不需要期であること、冬場の寒波も過去のこととなっている。
iii) 石炭の需要を急増させた中国南西部の旱魃も解消したこと、同じエネルギー原として原油も無縁ではない。
iv) BDIが一時2000を切るなどドライバルカーの不透明感が強まっているが、タンカーにも波及するのかが気になるところである。
v) タンカーマーケットに影響を与える世界経済の不透明感が払拭されていない。 ギリシャは発の財政赤字に伴う信用縮小と追加景気政策の困難、中国のバブルの問題、OECDのデフレと発展途上国のインフレ等々である。
2)
結論として
i)

SHの排除の問題があり、供給圧力が比較的に弱い。 SHが主流でその隻数が市況に影響を与えるStorage船も排除の時期が近づいていることであり契約が終り次第スポット市場には出ないで、スクラップヤードに直行するケースが多くなると思われる。

ii) 鉄鋼原料とエネルギー原料へ需要の安定度から言えば、前者は景気の動向を受け易くその分不安定である。 一方、エネルギーは民需の部分があり、比較の上では安定的である。
iii) もし、現在WS60前後の低迷したマーケットが継続する事態となった場合は、上述の要因に悪い方への変化が発生した時か、新たな悪い要因が加わった時である。 或いは、一番望ましくない世界経済が2番底になった時である。
   

 

  2010年の前半の海運市況に就いて 2010年8月掲載
   

2010年のドライバルカーのマーケットは、パナマックス以下の船型を主役とし、ケープサイズを脇役とするマーケット、即ち、パナマックス主導のマーケットなっている。 
  主なる要因は、印度と中国の石炭の輸入増であるが無視できない要因として中国の大豆輸入の堅調維持である。 ケープサイズは、2月と5月号で取上げた通り中国の鉄鉱石輸入率鈍化乃至は減少する可能性を示唆したが、その通りとなっている。
  今回は、2010年も半年経過したので、BDIとTDS社の船型毎のグラフを参照しながら前半の海運市況を整理することとする。 但し、海運関係の資料の発表が遅れることで6月に近い後半の分は推測が避けらず精密度に欠けることを予めご承知置き願いたいと思う。

   
(一) ドライバルカーの過去一年の市況推移表 (資料1参照)
1) 2009年は、6月と年末にBDIが4000の水準の2回にミニブームが発生した。
i)
このブームの特徴はケープサイズのIndexが上昇するとBDIが上がり、下落すると下がると言う典型的なケープサイズ主導の市況であった。 これは、中国の鉄鉱石の輸入増に伴うものであった。
ii) 然し乍、2回目の秋口のブームは、印度と中国の電力炭不足が深刻となり石炭の主流船型であるパナマックスとハンディマックスの中型船型が準主役となりケープサイズとの競演の色合いが濃いものであった。
2)

2010年は、ケープサイズの傭船料が中型船型のそれより下回る逆転現象が再三見られるようになった。 即ち、パナマックス以下の中型船型主導の市況である。

i)
この意味するところは、BDIが3000を越す水準を維持できたのは中型船型によるものである。
ii) ブームの期間の短期間化と山と谷の振幅が小さくなる特徴を示した。 これは、ケープサイズ主導でない市況の宿命でもある。
    (二) 推移表の背景 − 需要側
1)
鉄鉱石に就いて − 資料2参照
i)

中国の石炭の輸入状況
 ・ 09年6月以降月間1,000万トンの大台を越え。 増加の大部分は豪州炭の
   08年350万トンから09年は4,460万トンへの増加に伴うものである。
 ・ 1-5/10の輸入量は6,898万トン、年率換算1億6,898万トン、
   同期対前年比134%(68.98/125.9=134.2%)。
 ・ 5月の輸入量が、対前月比マイナス19%の1,099万トン、
   夏場を迎えての一時的な季節的要因か、中国南西部の旱魃解消の所為なのか
   目下不明で資料待ちである。

ii) 印度の石炭の輸入状況
今年の2月号のブローカーの窓にて下記の通り報告した

 ・ 原料不足はその手当てに狂奔する為、必要以上に運賃を上昇させる傾向がある。
 ・ 積地船混みで船舶の回転率が低下し、船腹需要を増やすこととなる。
 ・ 石炭輸入増が構造的な問題であり、長引く可能性が高い。

 現在も上記の流れが継続している。

2)
石炭に就いて − 資料3参照
中国の急増振りと11月に石炭不足の深刻さが顕在化した印度の安定的な増加が覗える。 今年もその構造的とも言われる流れが継続している。 この両国の輸入増が、ドライバルカーの市況の主役を担った原因である。
i)

Valeは豪州鉱石とブラジル鉱石の運賃の差約$15(6月現在)が「豪州鉱石との価格競争力の差を明確に認識させられ、運賃下げの圧力を受けることとなる」(Lloyd’s List)。従って、豪州鉱石との競争を念頭に置いた政策が必要となる。 目下はこの運賃格差を縮小する為、400,000DWTのVLOO大量発注となっている。 この船型は豪州には満船での入港は不可能である。

ii) 反対に、鉄鉱石需要増の過程では遠距離ソースでバッファ的要因を持つブラジル鉱石の需要増を齎すが、その場合の上昇局面では豪州のシッパーは容易に運賃上昇が可能となる。 この顕著な例が、過去2-3回、ケープのマーケットの上昇の先駆けの役目とそれを加速させたのが、豪州のシッパーによる高運賃・高傭船料の制約であった。
3)
中国の大豆輸入堅調の継続
今年のドライバルカーの市況を支える要因として、石炭の他に中国の大豆の輸入を注目していた。 1−3月の輸入量の実績は次の通りで、順調に増加傾向を示し、パナマックス以下の船型の主役に貢献している。 「1月407万トン、2月295万トン、3月401万トン 合計(1-3月)1,103万トン年換算 4,672万トン、対前年比 419万トン増(プラス10%)」。
    (三) 推移表の背景 − 供給側(資料4参照)
3船型でケープサイズの供給が群れを抜いている。 この半年間で185隻が事実としたら市場が吸収することは困難である。 この供給の圧力が資料1のケープサイズ市況推移のグラフに正直に出ている。 664隻(63.5%)の発注残の多で長引く可能性を示唆している。
    (四) 結びに変えて
1)

今年前半に注目していた点は
i)
2009年中国の鉄鉱石の輸入増の80%が計算上バブルの可能性がある。 事実を市場が教えてくれるのか?
ii) 印度と中国の石炭の輸入増とインパクトは小さいが、中国の大豆輸入の構造的とも言える輸入増で鉄鉱石輸入伸び率減を継続して穴埋め可能か?
iii) 市況高騰時言われた「高市況は上海万博まで」の帰趨。
iv) 2010年危機説や2番底説が消滅したのか?

2)
実態 − 懸念材料が7月になって増殖中
i)
7月上旬にBDIが2000を割り込み急激に軟化している。 夏枯れと言う一時的な現象なのか流れの変化に伴うものなのかデーターが欲しいと頃である。
ii) 印度からの情報によると。
 ・ 中国の鉄鋼ミルが鋼材価格の低落、在庫の増加と需要減で減産を始めた。
 ・ 印度の第一四半期(4/6月)鉄鉱石の輸出量(重に中国向け)は前年同期の
   2,450万トンからマイナス15%の2,080万トンとなった。
iii) 中国からの情報も6月中旬より鉄鋼の減産が始まっていると報じている。
iv) 以上の通り7月に入って、BDIが2000を切るなど懸念材料が急激に多くなっている感が否定できない。 注目点は
 ・ 鋼材の値下がりは船舶のスクラップ価格に敏感に影響を与える。 
   目下VLCCで$400〜$415と弱含み気配である。 
   ファンダメンタルから一層の低落が懸念される。
 ・ 決定より早く噂となる第3四半期の鉄鉱石の価格予想である。 
   既に、低下するとの予測が強まっている。
 ・ 海運市況に影響を世界経済の不透明感が払拭されていない。 
   ギリシャは発の財政赤字に伴う信用縮小と追加景気政策の困難、中国のバブルの問題、   OECDのデフレと発展途上国のインフレ等々である。 
   2番底の可能性否定出来ず楽観は禁物である。

ドライバルカー市場はオイルショック後のタンカーとは違い自律性は維持されており過度の悲観も禁物であることを最後に追記して置きたいと思う。
   

 

  鉄鉱石の価格決定方式変化の背景とその波紋 2010年7月掲載
   

今年の鉄鋼原料の価格決定方式が年間契約(Annual benchmark)から四半期毎の契約(quarter pricing)へと変更された。 ほぼ半世紀続いた方式が終焉を迎えたことで歴史的な変化である。 今回はこの変化の背景とその波紋に就いて整理するもこととする。 但し、この問題を取上げたSSYのShipping monthly review 4月号とLloyd’s Listの4月15日号を参考にしたことで、焦点がぼやけた感が否定できなくなったこと予め承知置き願いたい。

   
(一) 4半期毎の決定に就いて
1) 価格の推移
09年の価格が1Q(4-6月)に約2倍となり、2Q(7-9月)は、更に、23%アップとなり、3月の年度末に比較すると140%アップとなった。 これは、12ヶ月前との比較では3倍となっている。
2)
廃止の必然性
莫大 な人口を抱え、インフラ関係の投資が遅れていた中国と印度の高度成長は資を鯨飲する傾向があり、年度始めと終わりでは価格に大きな開きが出る。 2008年のリーマンショックの年を除き、不満が鬱積することtなった。 その反動として大幅な価格上昇となった2006年と2009年がその典型的な例である。 従って、今回の年間価格決定の廃止は、
i)
実態にあった価格が望ましいとの市場の意志表示でもある。
ii) 需要増に伴う売り手市場が続いたことと寡占化で生産者の意向が通りやすくなったことも一因である。
iii) 日本以外と思われるが、「スポットを基礎に置いた四半期よりも短い価格決定を歓迎する方向に進みそうである」(SSY)。 即ち、4半期ごとよりも短くなることが歓迎されて来ている様である。
3)
4半期毎の価格変更の結果
i)
海運業(不定期船部門)にとっては本来のあるべき姿への回帰の意味合いが強いが、海運関係以外では日本では年間のbenchmark価格決定に親しんだだけに、一部混乱があるかもしれない。 企業はランニングコストの変化に対応することが要求されることが常時要求されるが、一層の感性と敏捷性が要求されることになろう。
ii) この様な状況下では、透明度を含めた指標の正当性が大事となるが、「従来指標として使われていた印度/中国の鉄鉱石価格は鉄分の含有率が低く不適格であり、豪州/中国の鉄鉱石に代替されることになりそうである」(Lloyd’s List)。
iii)

トレーダーの投機の機会を増やすこととなる(Lloyd’s List)。この意見には若干の異論がある。 年間契約価格と実態としてのスポットの価格との乖離が大きくなっている時に投機が発生するのであって、大きな差異が無い時には大掛かりな投機は発生し難いと見るべきである。 将来の需要増予想はスポット価格に既に、組み込まれていると見るべきである。

    (二) FOB契約からCIF契約主流への変化
今回の契約期間の変化は同時にFOB契約からCIF契約主流への変化を伴う(Lloyd’ List 15/Apr/10)ものであった。中国の輸入が全てCIF契約となってはいないが、主流となっていることは間違いない。 (大手の生産比率が少なく、中小はCIFで輸入している為)。

1)
CIF契約が増えた理由
日本・韓国・台湾と欧州は、鉄鉱石や石炭の輸入は、FOB契約が原則で、例外的にごく少量のCIF契約を例外的に認めていたが、中国が最大の輸入国となってからは、前述も通りCIF契約の比重が大きくなった。その背景としては、次のことが考えられる。
i)

輸入が急増した中国で、その輸入を支えるだけの海運産業が存在しなかったことで、鉄鉱石の生産者、シッパーに配船を任せざるをえなかった。日本の鉄鋼・造船・海運の3団体の協力で鉄鋼原料輸送を拡充したのとは大きな違いである。

ii) 輸入の急増で鉄鉱石の売り手市場が2003年以降長期に続いたことで、シッパーが海運市場への進出意欲を高めた。 それは恰も、オイルショック以前のタンカー不足時代(運賃が高い)にタンカーを所有した石油メジャーと同じ発想である。
2)
CIF契約が主流化に伴う変化
ブラジル鉱石はFOB契約主体の東アジア(日本、韓国、台湾)の鉄鋼業にとっては原料の安定的確保を目的での地域分散と鉄鉱石需給のバッファの役割の両面があった。 即ち、豪州鉱石の補佐する副次的な立場でもあった。 従って、割高な運賃を消費側で負担することに抵抗感は少なかった。 然しながら、CIF契約が主流でスポット輸出が主流となると次の様な変革を齎している。
i)

Valeは豪州鉱石とブラジル鉱石の運賃の差約$15(6月現在)が「豪州鉱石との価格競争力の差を明確に認識させられ、運賃下げの圧力を受けることとなる」(Lloyd’s List)。従って、豪州鉱石との競争を念頭に置いた政策が必要となる。 目下はこの運賃格差を縮小する為、400,000DWTのVLOO大量発注となっている。 この船型は豪州には満船での入港は不可能である。

ii) 反対に、鉄鉱石需要増の過程では遠距離ソースでバッファ的要因を持つブラジル鉱石の需要増を齎すが、その場合の上昇局面では豪州のシッパーは容易に運賃上昇が可能となる。 この顕著な例が、過去2-3回、ケープのマーケットの上昇の先駆けの役目とそれを加速させたのが、豪州のシッパーによる高運賃・高傭船料の制約であった。
    (三) その間の中国の動向
中国の粗鋼増産の動きに大きな変化は見られないが、「印度の鉄分60%以下低品質の鉄鉱石輸入が抑制されたこと、併行し、輸入鉄鉱石価格抑制に為と思われる国内産の鉄鉱石を昨年の実績8億8,000万トンから10億トンに増量する政策が打ち出された。 結果、印度−中国のSupermaxBCの傭船料が$39,000から$29,000へ急落した」(SSY)。今回のテーマとはやや離れた内容となるが、関連が強いため付記することとした。
    (四) 結びに変えて
1)

海運市況の投機化や鉄鉱石のコモディティ化が強まったのは、FOB契約のCIF契約への変化とスポット化に伴うものである。

2)
年間からスポット化への変化が”it could be good for everybody”(Loyd’s List)が避けられない底流となれば、年間の決定方式に拘り続けることは日本のガラパゴス化の一例となることになるかもしれない。
3)
スポット化で問題なのは、原料から製品市場までの不安定化である。 造船業界では造船用の厚板の安定化が研究課題となる。 厚板の先物価格の市場が成立しないのであれば、銑鉄の先物取引でヘッジせざるを得ないこととなるかもしれない。 造船業界は為替と銑鉄の先物の予想が大事なテーマとし抱え込むこととなるかも知れない。
4)
このスポット化は、市況の一層の不安定性を齎すが、市況が動けば儲かるチャンス生まれるのがドライバルカー特徴の一つだとすれば、歓迎さるべき事態の到来と言えそうである。
5)
今回のこのテーマは、鉄鉱石の海上輸送量の2/3を占める中国では既に昨年から始まっており、1年遅い時代遅れのテーマと言えそうである。
6)
鉄鉱石の価格の上昇基調が何時まで続くのかが最大の注目点である。 ピークが近づいていることは間違いあるまい。 心配なのはギリシャ発の信用危機であり、中国のバブルである。 そして世界経済の不透明感は依然として払拭されていない。 先触れは船舶を含めたスクラップ価格に現れる。 目下の所、低落の気配は薄いようである。このスクラップ価格の推移と2番底の原因となりかねないギリシャの帰趨を特に注目したい。
   

 

  流れに変化が見られるVLCC市況 2010年6月掲載
    MEG/JapanのVLCC推移グラフの表1参照、第1に運賃が09年12月より上昇傾向を示している。 第2は、日韓の製油所の補修工事で、3月から5月に掛けてVLCCの市況は軟化をするのが通常のパターンであるが、軟化傾向ではあるが、前年比では底堅い水準を維持している。 今回は、この堅調の背景に就いて整理することとする。
   
(一) 荷動き増とトンマイル増
1) 「中国の1Qの原油の輸入量は39%増の5,668万トンとなった。 自国で精製する方針に変更ない *****安定的に増加して行くだろう」5月12日の商船三井近海取締役賀来氏の講演会。
2)
印度も同様、高度成長に伴う需要増と新規の製油所の稼動も始まっている。 荷動き増の結果、制約数が1月を境に急増し、運賃水準の上昇を齎した。 詳細表2参照
3)
中国と印度の発電用一般炭不足が昨年秋口より深刻化し重質原油の需要が高まっている。これは遠距離ソースのベネズエラやブラジル原油の輸入増を齎している。
4)
ベネズエラ(重質油で価格が安い)の中国と印度向けの輸出増実態は下記の通り。
イ)
原油輸出先の上位3国は、米国;100万b/d、中国;46万b/d(前年比21%増)、印度;20万b/dとなっている。 今後米国の輸入増は期待されていない。
ロ) 印度の石油3社が、ベネズエラの油田(Carabo-1 project)に18%(210億ドル)投資することで合意に達した。 ベネズエラ原油の輸入増が期待できる。
ハ) ヴェネズエラと中国が共同で製油所を建設中である。
    (二) 船腹供給サイド ― 2009年の長期低迷は供給サイドに影響を与えた
1) 今年のVLCC(SH)のスクラップ量は昨年と同数の12隻に達した」(21/4日海事プレス)
2)
CapeBCの堅調に助けられ、Ore Carrierへの改装が活発となっている。 4月現在「6隻のVLCCがVLOOへの改装のため売船された」と言われている。 更に、Valeが5月早々5隻VLOOへの改装用として1億1,750万ドルで買船した。
3)
スクラップ価格が鉄鉱石の価格に引っ張られ$500弱と高値を維持しており、タンカーの市況次第であるが、スクラップが進む可能性が高い。 以上の状況で、新造船約70隻による供給圧力は、80隻程度と思われる既存のSHのphase outもあり大きな供給圧力とはならないかも知れない。
    (三) 結びに変えて
1) 3昨年のタンカー市況の悪化の一因として、米国の中近東原油の輸入減であったが、その分を中南米/インド・中国の荷動き増で、穴埋めしつつあると言える。
2)
中南米/印度・中国の重質原油の需要増はタンカーのトレードパターンが変わることであり、今後のタンカー市況にかなりの影響を与えることとなる。少なくとも、鉱油兼用船(OBOやOO)の存在価値を益々否定することとなる。
3)
印度と中国の高質原油の歓迎は、本格的なマイカー時代と言うよりも、それ以前の産業用のインフラ拡充が急務であることを示していると言えそうである。
4)
タンカーの本格的回復には日欧米の景気回復なしには考えられない。 欧州はギリシャの経済破綻もあり、日米もデフレからの脱却に苦慮しており、不透明感は払拭できおらないことを留意して置くべきである。
5)
新造船のキャンセルの問題は、避けて通れない問題であるが、稿を改めることとする。 いずれにしても、VLCCを発注した船主も受注した造船所も、一流企業が多いことで、小型のバルカーほどのキャンセルは無いものと思われる。
  【表1】 運賃推移表
  【表2】  8ヶ月のMEG積VLCC制約数の対前年比移表 (松井商会のReport)

 

Sept

Oct

Nov

Dec

Jan

Feb

Mar

Apr

Sep/08-Apr/09

103

109

96

97

92

85

81

79

Sep/09-Apr/10

88

88

90

89

100

90

105

106

 

-15

21

-6

-8

8

15

16

27

   

 

  中国の鉄鉱石輸入増は投機マネー主導(No.2) 2010年5月掲載
    海運市況は国際政治や気候などの経済外的な要因が影響を与えることもあるが、主に経済的な要因で左右されることは一般に認められていることである。 そうであれば、ドライバルカーもタンカー市況も似た様な動きをする筈であるが、現実は違った動きをする。
この二つの運賃推移にタイムラグもあり、それを利用して、いずれかの高運賃の方に配船することで高収益を上げたのがオイルショック前の鉱油兼用船(OBO)であった。 
2009年、タンカーは、昨年末まで、係船点に近い水準で推移した。 一方、ドライバルカーは、2回の亘り傭船料が10万ドルの傭船料が制約される等高運賃を謳歌した。 今回は、この大きな較差の背景を整理・分析をする事とする。
   
(一) KAIUN 3月号概略(詳細参照願います)
1) 昨年の鉄鉱石輸入増加分1億8,430万屯の内、実際に粗鋼生産に使われた鉄鉱石は3,720万屯で20.2%に過ぎない。 残りの約80%の1億4,710万屯は投機対象として在庫投資となっているものと推測される。
2)
但し、在庫投資比率が80%と異常に高いことに違和感を覚えていたが、中国の統計資料の信憑性に問題ありと言われている通り正確さかけることは避けられないと考え、傾向を明確化することに主題を置いて書いたものである。 尚、その時点では電炉による粗鋼生産量は手元にデータがなかった為省略した。
   
(二) 指摘による含有率と実績をベースに訂正した数量
1) 含有率を国内産23%、輸入63%での鉄鉱石在庫投資量
生産可能数量(A)は6億1,723万屯
国内産鉱石 :2億2,140万屯(=8億7,887万屯 x 23%)
輸入鉱石 :3億9,583万屯(=6億2,830万屯 x 63%)合計6億1,723万屯 
粗鋼生産量 :5億6,640万屯
電炉粗鋼生産量 :4,550万トン(08年の実績を転用)
高炉粗鋼生産量(B) :5億2,090万屯 (=5億6,640万屯−4,550万屯)
差引き(A)-(B) :9,633万トン万屯
鉄鉱石在庫投資数量 :1億5,290万屯 (=9,633万屯/63%)

輸入鉱石の在庫投資の1億5,290万屯は昨年の輸入増加分1億8,430万トン(= 09年の6億2,830万屯−08年の4億4,400万屯)の83%となり、一方、粗鋼生産で消費された鉄鉱石は3,140万屯(=1億8,430万屯マイナス1億5,290万屯)で輸入増の17%となる。

2)
以上の計算の最も問題点は、中国の統計資料に信頼性にあるかも知れないことである。 膨大な数の鉄鋼ミルと広大な箇所に分散しているミルの統計の困難さから来る不正確さもあるかもしれない。
    (三) 結びに変えて
1) 3月号の便宜的な計算方法と今回の計算の結果は大差が無かった。 違和感と先行き不透明感は否定できないが、それを緩和してくれる要因としては;
イ)
中国の公共投資に支えられた経済であり、ドライバルカー市況であるが、その背景は「人口100万の240箇所ある」ことと、しかも、「清の末期から約1世紀の間低迷が続き、その間のインフラ投資がブランクになっていたことに対する反動」との指摘の通り、公共投資対象は膨大で、2015年までは対象に事欠かない。
ロ) 鉄鉱石の新年度の価格がWale/日本間でApr-Junの3ヶ月で92%アップの$105で決定した。 短期間ではあるが、ファンダメンタルの良さを象徴していると言えそうである。
ハ) 現在、市況に影響を与えているのは、PanamaxBCが主流の中国と印度向けの石炭の急増と4,300万屯となった中国による大豆輸入増である。 いずれも季節的な需要ではなく、恒常的な需要と言えそうである。
2)
見過ごすことが出来ない点としては;
イ)
鉄鉱石価格の推移である。 従来同様の売手市場が続けば楽観的、逆に買手市場となれば悲観的な見方となる。 中国の価格交渉の経緯と結果が注目される。
ロ) 92%の価格上昇が、投機的と言われている在庫投資への意欲を削ぐことになり、輸入急減とならないかである。
ハ) ドライバルカーでは、Cape-sizeBC主導のマーケットの再来があるのか、インパクトが比較的に小さいPanamaxBC主導の市況となるのかである。 目下、Cape-sizeBCの弱さが気になる。
ニ) 時間的制限され、しかも、大規模な投資が要求された北京オリンピックや上海万博の様な公共投資の終了後も、経済、引いてはドライバルカー市況をも支えるだけの規模の投資を維持できるのかである。 即ち、中国だけは息切れが無く、別扱いが可能かである。
ホ) 中国での懸念材料が増えている。 「鉄鋼・車、在庫増の懸念」、「輸出も本格回復におくれ」、「北京など個人消費鈍る」日経16/04/10と繰り返し指摘されている株と不動産等のバブル懸念であり、最近報道が増えたインフレ懸念である。
   

 

  ドライバルカーとタンカーの運賃格差の背景 2010年4月掲載
    海運市況は国際政治や気候などの経済外的な要因が影響を与えることもあるが、主に経済的な要因で左右されることは一般に認められていることである。 そうであれば、ドライバルカーもタンカー市況も似た様な動きをする筈であるが、現実は違った動きをする。
この二つの運賃推移にタイムラグもあり、それを利用して、いずれかの高運賃の方に配船することで高収益を上げたのがオイルショック前の鉱油兼用船(OBO)であった。 
2009年、タンカーは、昨年末まで、係船点に近い水準で推移した。 一方、ドライバルカーは、2回の亘り傭船料が10万ドルの傭船料が制約される等高運賃を謳歌した。 今回は、この大きな較差の背景を整理・分析をする事とする。
   
(一) 供給側 - 09年年初の発注残(Drewry のreportによる )
1) VLCC:- 217隻の66,896DWTで既存船の44.6%、
Cape :- 663隻の111,863DWTで既存船の99.8%。
2)
発注残の差は期待感の差であるが、CapeBCは期待感が強く既存船腹量と略同量の発注残となっていた。VLCCはCapeBCの発注残の対既存船比率では半分以下であったが、係船点に張付いた。結果は、期待感を遥かに超えた格差となった。
   
(二) 需要側
1) 輸送量の観点
イ)
ドライバルカーを左右している中国の鉄鉱石の輸入量は6億3,000万トンを超え、世界の海上荷動き量の2/3を占めている(詳細3月号参照)
ロ) タンカーに関しては09年主要国の原油輸入量(mbpd)と対前年比は下記の通り。
USA: 9.15 (-6.63%), Japan: 3.66(-20.44%), OECD Europe: 8.94(0.23%)、
中国: 4.09(+33.48%) (SSY mothlyによる)
以上から日本の20%強の輸入減に助けられ第2位の輸入国となったが、米国やOECD 欧州の半分以下であり、日米の輸入減の穴埋めが精一杯であった。 中国の原油輸入増は、鉄鉱石の輸入量・世界比率と比較すると市況への影響力に格段の差となっている。
2)
輸入ソースからの観点
イ)
中国のソース別輸入量(Clarkson Research Service, million tons)
  S.Arabia Oman/Iran Angola Russia Others Total Gross %
2008 36.37 35.90 29.76 1.78 59.52 163.34 +10.3%
2009 36.96 32.70 28.09 4.16 65.40 167.32 +11.7%
ロ) この資料から見る限り、(イ)ロシア原油(パイプによる)の362万トンの増量も無視できない。(ロ)2009の輸入量は約4,000万トン増で2億トンを超えたと言われており、その場合でも約25%増(仮に33%増としても)となるが、分母が小さいことを考慮すれば市況への影響度小さい。 又、鉄鉱石の1億8,430万トン輸入増に比較すると微々たるものと言える。
3)
トンマイルの観点
イ)
最大の輸入国である米国の6.63%減は、経済原則通り遠距離ソースのAGからの輸入減となった。 象徴的にサウジ原油の最大の輸出先が中国となり米国を追い越したことである。
ロ)

米国の輸入先として近距離のベネズエラ、ブラジルや西アフリカ原油の生産増に伴う輸入増にもよるものと推測される。(データが遅れるため推測)

ハ) 中国の西アフリカ原油(遠距離)の輸入では、アンゴラ原油(大慶原油と油質が似ている為輸入が多い)が目立つのみで、軽質のナイジェリア原油が目立たない。これは、中国が産業用の重質油の需要比率が高く、未だ本格的なマイカー時代に突入していない所為である。
   
(三) 結びとして
1)

話題となった事
繰り返しとなるが、(イ)輸入量で日本を追い越し米国に次いで第二位となったこと、(ロ)サウジ原油の輸出先が米国を追い越し第一位となったこと、(ハ)自動車の販売数と生産量が世界第一位となったことである。

2)
ドライバルカーでは鉄鉱石の港頭在庫が注目されているが、タンカーに関しても、中国の存在は今後益々無視できなくなり、日米欧と同様に中国の原油在庫やガソリンの在庫量が、原油価格を引いてはタンカー市況に影響を与えることとなりそうである。
3)
結びとして、ドライバルカーとタンカーとの格差は小さくなると思われるが、ドライバルカーに引き上げられるのか、タンカーに足を引っ張られるかは世界経済次第であり、海上物流に影響を与える中国の経済成長次第である。 不透明感は払拭されておらず、程度は別として、後者への収斂化の可能性が強そうである。
   

 

  中国の鉄鉱石輸入増は投機マネー主導 2010年3月掲載
    2008年9月、サブプライムローンに端を発したリーマンショックは、新たな大恐慌の到来かと言われ世界経済は憂色に包まれた。 その気刺激策として、日米欧の主要国 の政府は国によっては史上最高の財政資金の投入と金融緩和策を講じた。 中国も2年間に亘り4兆元(GDPの13%)の刺激策と金融緩和策を講じた。 これらの低金利と量的な金融緩和が、行く場を失ったマネーをしてリスクのあるassetやcommodityへの投機的投資を増加させバブルを惹き起している。 更に、最近では、ドルキャリトレードがこの傾向に拍車をかけている。

ドライバルカーの市況を左右している中国の鉄鋼に関しては、「中国の金融緩和が原材料(含む鉄鉱石の輸入増)の投機在庫につながった可能性が大きい。-- 国際商品と海運市況に就いては悲観的である」とエコノミストより指摘(出所は照会下さい)があった。 これが現実化すれば、今年のドライバルカー市況に暴落を含め大きなインパクトを与える危険性がある。 今回は、この指摘に就いての整理・分析をすることとする。
   
(一) 中国の鉄鉱業の実情
1) 消費された鉄鉱石は1,471.9 MT (国内産鉄鉱石: 843.6MT + 輸入鉱石: 628.3 MT)。
2)
Fe%からの粗鋼生産可能数量は
イ)
国内産: 253.1 MT (=843.6 MT x 30%)
ロ) 輸  入: 408.4 MT (=628.9 MT x 65%) 合 計: 661.5 MT (A)となる。
3) 実際の粗鋼生産量: 565.9 MT (B)
4)
粗鋼生産可能数量と実際の数量の差(A-B)の95.6 MT(=661.5-565.9 MT)が、鉄鉱石として在庫投資されていることとなるな。 Fe分から換算すると鉄鉱石の量は下記の通り。
イ)
国内産鉱石に換算した場合: 318.7 MT (=95.6 MT/Fe30%)
ロ) 国内産鉱石に換算した場合: 318.7 MT (=95.6 MT/Fe30%)
   
(二) 上記の問題点
1) 日米欧が軒並み約30%減産を余儀なくされている事情にも拘らず、高度成長化とは言え、グローバル経済の下で増産が続き、09年の中国の鉄鉱石輸入量が、628.3 MTで世界の海上荷動きの約2/3(65.6%)と粗鋼生産量は565.9 MTで半分弱(46.4%)と突出していること。
2)
粗鋼生産量は半分で輸入量は2/3はマッチした数量ではないことである。 即ち、前述の在庫投資の147.1MTは昨年の輸入増加分184.3MT(=628.3-444.0)の79.8%に当たり、実需による輸入増は37.2MT(=184.3-147.1) で20.2%に過ぎないことである。 従って、在庫投資の実態は在庫投機であること言えよう。
3)
上記の他の問題点として、鉱石の年間契約価格が$60台であったにも拘らず、鉄鉱石のスポット価格が2倍近くの水準を維持していることである。  

最新のスポット価格は「印度鉄鉱石のFOBのスポット価格は1月の$130台が2月には$120台」(日経9/Feb)と報じている。 尚、来年度の鉄鉱石の価格は40/50%程度の値上げと四半期毎の価格設定が噂されている。
   
(三) 結びとして
1) 中国の経済がバブル化で過剰となった鉄鉱石の吸収可能か09年の輸入増の内、投機在庫が80%、実需が20%の内訳が正しいとして、今後は09年以上のバブル的な輸入増は考え難い。 加え、10年のCapeの新造船321隻(キャンセルで250隻説もある)があり、09年並のhealthyな水準の維持は困難と思われる。
2)
世界経済の本格的な回復
新たな懸念材料は、Dubai Worldとギリシャに続くPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペイン)の財政破綻の問題が影を落としユーロ安をもたらしていることである。 これはEUの経済の低迷と同地域向けの輸出の減少を齎す。 これがドル高を引起こすこととなれば、ドルキャリトレードが逆流することなり、バブルの破綻が早まることとなる。
3)
以上から悲観論にならざるをえないが、経済は生き物であり、現実的には中国の自動車販売数の急増、北東部・内陸部の高度成長(日経13/Feb)やインフラ投資増、印度と中国向けの石炭の輸入増等々明るい兆しも見えている。
取り敢えずは、来年度の鉄鉱石の価格交渉の推移と結果(値上率と契約期間)を注目したい。 それが2010年のファンダメンタルの予兆となり、波乱の現実化があるとすれば、その時期とインパクトの強弱にも影響を与える可能性があるからである。