2010年の展望に就いての追記 2010年2月掲載
   

1月号に掲載した2010年の展望に就いて、貴重なコメントが多数あり、いずれも鋭い指摘で無視し難い内容だったので、2月号で急遽取上げることした。 今回は、「展望」で書き切れなかった分の追加説明と上記の貴重な指摘に就いての筆者の考え方を申し述べることとした

   
(一) 日追記 – 現在のドライバルク市況の堅調の要因

1)
印度の燃料炭不足が深刻化と − 09年のドライバルカー市況の堅調の全般的な堅調の一要因として、中国と印度の石炭の輸入増を取上げたが、印度の石炭に就いて資料不足で不十分の内容となっていた。 本件に就いて印度の Atlantic Shipping 社の12月31日付けの興味あるレポートを発見、その概要を紹介することで説明不足を補うこととする。
イ)

石炭不足付きまとわれる(haunted)印度の発電所)
石炭不足が11の発電所に打撃を与えている。 11月の供給不足と需要増による電力生産増により貯炭が底を突きかけている。 発電所によっては、貯炭量が一週間を切る様な深刻な事態となっている。

ロ)

パラディープ港では貯炭満杯で揚荷不可能
同港の港湾当局は鉄道会社に貨車の増加を連日要請し早急な打開策を要請しているが、港頭の石炭が200万トンを超え、貯炭用スペース不足で揚地変更を余儀なくされている

2)

印度の石炭不足とも関連があるが、石炭の来年度の価格の上昇は必至の状態で、3月までは駆け込み需要が一層強まる可能性がある。

3)

以上の2項目から言えることとして、(i)原料不足は原料手当てに狂奔することなり、コストより量の確保が優先され兼ねず、船腹需要を必要以上に増加させ運賃を上昇させる可能性が大きくなる。 (ii)船混は当然のことながら、船腹の回転率を低下させ腹需要を増やすこととなる。 この様な構造的な事態は長引く可能性が強い。 (iii)輸送貨物のコモディティ化を考慮に入れると駆込み需要が通常より大きくなる可能性があり、春まで強含みで推移するものと思われる。

   
(二) 
コメント
1) 「中国の国内産の鉄鉱石の生産量と港頭在庫の分析が欠如」
この指摘に就いては、国内の生産量は生産者が非常に多い事で追跡が不可能に近いのではないのか。 又、港頭貯鉱量も輸入量は掴み易いとしても搬出量は正確に掴めないのではないのか、中国の統計の信頼度から言っても信用出来るか疑問である。 従って、市況を動かす為の材料として使っている気配がある。 それ故に、「展望」の材料とし言及しなかった。 但し、信用する/しないは別としてスポットの引合い時に、重要な説得要因として状況に応じて使えるものと思われる。 鉄鉱石がコモディティ化していることの象徴的な一例だと言えそうである。

因みに、在庫量を取引の重要な要因としては原油取引がある。 石油の米国等のOECDの在庫量は、タンクに保存されていることもあり信用するに足りるが、港頭に山積みの鉄鉱石の数量による市況予測は信憑性に問題があると見るべきである。
2)
「中国の財政投融資政策に就いて、一党独裁であるが故に、確実に実施されると言うことで、需要があるから粗鋼が増えると言うよりは、需要そのものを国家が作り出すことです。 この場合、来年度の粗鋼生産は、少なくとも今年以上のレベルを維持する可能性があり、同時にアメリカ経済が上昇に転じることがあると、バルカー市況、タンカー市況は可也の好調を維持する可能性がある」

以上の指摘が、今年のドライ市況を予想以上に収益を上げえた要因の一つだと思われます。 それは共産党一党独裁の他に2兆ドルを超える外貨準備高が可能にしているとは思われる。 但し、問題点は、複数年以上にわたる財政資金の大量投入による刺激策がOECD諸国では無理だと言われているが、中国はそれ以上の長期亘り継続が可能なのかである。 多分不況による目前の社会不安より財政赤字を無視しての景気刺激策を優先した方が社会安定に繋がるという発想からかもしれない。 即ち、将来へのツケを残すより目先の安定が優先すると言う事である。 又、09年の貿易黒字額は、34.2%減の1,961億ドルと報じられた。 減少傾向ではあるが、依然として巨額の黒字となっている。 輸出産業が縮小傾向で投資も減少している中で、内需拡大による景気刺激策で貿易収支黒字の維持が可能とは思えない。
3)
結論としては、パナマックス主導の市況が今年度一杯継続する可能性が高まっていると言えそうである。 

忘れていけないことは、輸送貨物のコモディティ化時代の特徴として、貨物価格の変動が運賃に強い影響を与えることになる。 具体的には、運賃の振幅を大きくしたり、些細な要因に対しても鋭く反応する傾向が強くなることである。 従って、ファンダメンタルに拘り過ぎるとこれらの変動に俊敏に対応できなくなる恐れがあることを念頭に置いて置くべきである。
   

 

 

底流の変化と回復時期に就いて 2010年1月掲載
   

2009年のドライバルカー市況は、中国特需が齎した史上最高で最長の市況の終焉となった前年(2008年)の10月の暴落(collapsed)が、どの様に影響を与え推移を示すのかが注目点であった。 具体的に、@急落後の反動(correction)が、どの程度で何時出てくるのか、A信用不安で大恐慌となることにならないのか、B在庫調整が終われば本格的に回復するのか、Cドライバルカー市況を左右している中国の鉄鋼業の拡大期が終わるのか、安定成長期に向かうのか、それとも低迷期を迎えるのか等々であった。

@の反動に関しては、春以降に期待以上の反動となり現在も満足できる水準を維持している。Aに関しては、目下の所は、金融緩和策と巨額の財政資金の投入により最悪の事態は避けられた。 ドライバルカーは中国の景気刺激策の効果等により鉄鋼原材料は順調に増加し、今回の中国特需によるブームを除けば最高のマーケットであり、予想以上の高収益を維持している。 C中国の鉄鋼業は過剰問題を抱えていると言われながらも拡大期の雰囲気は未だ持ち続けている様である。
   

(一) 回 顧
 回顧に就いては、BDI等のindex推移表を見ながら説明することとする。
1)

推移グラフから − 推移グラフから言える事はケープサイズ主導の市況であったことである。 これを支えたのはケープサイズの太宗貨物である鉄鉱石の中国による輸入増である。2008年の月毎の中国の鉄鉱石の輸入量は表2の通り。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
32.6 46.8 51.0 52.1 53.5 55.3 58.1 49.7 64.6
(Drewryの資料による)
2)

7月迄、毎月の輸入量が5,000万トンの大台を超え記録を更新し続け9月には6,460万トンと最高を記録した。 これは積揚港、特に、中国の船混による滞船を齎し運賃をスパイラル的に上昇させた。
又、SSYの資料では表3のとおりである。

  2008年 2009年(予想)
鉄鉱石輸入量 444.0 (=100%) 609.2 (137.2%)
粗鋼生産量 499.1 (=100%) 542.9 (108.8%)
09年の輸入予想の6億920万トンは対前年比37.2%増となり、粗鋼生産量の対前年比は8.8%増となっている。 世界経済が100年に1度の大不況と言われている中で粗鋼の8.8%増もさることながら狂奔に近い輸入増は理解に苦しむところである。
3)

6月のピーク後、反落し調整局面があったが、概ね歓迎すべき水準は維持された。
9月に入り急落、23日には$21,000台迄低落した。 これは上り過ぎの反動と8月の輸入量が、4,970万トンと2月以来5,000万トンの大台を割り込んだ後遺症と思われる

4)

 9月には反発し6,400万トンと輸入記録を大幅に更新し6月と同水準まで上昇し現在に至っている。

5)

1年を通じて準主役的にマーケットを支えたのが石炭の輸送増である。 第一は中国の石炭の輸入増である。 特に、10月の2回目のBDIの4,000越えは、需要期を控えた中国の厳冬予想が燃料炭の需要増マーケット上昇傾向を強めたと思われる。

中国の石炭輸入量は次の通り

  2008年 2009年(予想)
原料炭 6.8 (=100%) 30.5 (448.5%)
燃料炭 64.0 (=100%) 76.0 (108.8%)
合 計 40.8 (=100%) 106.5 (108.8%)
2007/2009と増加率) 単位100万トン SSY の資料

尚、輸出量は08年より半減の2,170万トンの見込み、輸出のピークは95年の8,650万トンであったから四分の一まで減少している。 これは、近海の市況にはマイナス、ハンディマックス以上の船型には大きなプラス要因となっている。 第二は、原油高止まりに伴う燃料炭の底堅い需要がマーケットを支えた事は間違いないであろう。

   
(二) 
特記事項として

1)

上記の推移の中で理解できない点を指摘したが、これらの現象はバブル発生に伴う可能性大である。 世界の経済状況から見て輸入記録の更新を続け粗鋼増産を継続する程鋼材を取り巻く環境は良くない。 それを象徴するかの様にコーラス社が英国のレッドカーの製鉄所を閉鎖すると12月初めに発表した。 中国政府も鉄鋼業は過剰であるとして造船業も含め設備投資の抑制策を打ち出している。
この様な環境下で荷動きが活発なのは鉄鉱石のコモディティ化に伴う荷動きの変化と言わざるを得ない。 即ち、景気対策に伴う世界的な金融緩和と財政資金の投入、中でも中国の量的な金融緩和策と米国によるドルの低金利とドル安容認がドルキャリトレードを発生させている。 これらの資金が原油・鉄鉱石や非鉄金属の原料への資金ファンドの流入である。 中国政府による原料備蓄の方針によると言われているが、高価な銅鉱石や原油ならいざ知らず鉄鉱石、特に、石炭迄も備蓄の対象とする事には疑問を感じる。 備蓄に名を借り価格上昇期待の利殖行為と言えそうである。 この様なファンダメンタルからかけ離れ論理的に理解し難い現象はバブルが発生していると言わざるを得ない。

2)
第2次オイルショック前までは、日本の粗鋼の生産量を注目すれば、ドライバルカー市況の予測が可能であったが、2009年はその影響力の低下が非常に目立った。 2009年の日本の鉄鋼業の粗鋼生産と鉄鉱石の輸入量は次表の通りとなっている。
  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
輸入量 9.2 7.6 5.9 6.5 7.0 7.3 8.5 9.7 10.8
粗 鋼 6.4 5.5 5.7 5.7 6.5 6.9 7.7 8.3 8.3

2008年の月平均の粗鋼生産量は989.2万トン、鉄鉱石輸入量は1,170万トンでと比較して減産の厳しさが伺い知る事ができる。 
日本の鉄鋼の減産は長期契約船の一部はスポット市場に出て来てマーケットを低落させるが、今回はマーケットへの影響は全く無かった。日本の影響力の低下は否定できなとしても中国だけが世界の鋼材市場とは無縁であるかの様に増産を継続が可能である状況も理解に苦しむところである。

   
(三) 
展 望

内容は2009年のブローカーの窓の結論と大差がない事と慎重な対応が必要である事の繰り返しとなることを予め承知置きき願いたいと思います
   
1) 山高ければ谷深し   海運業でも運賃が高くて高収益の場合投資が増えることは当然の帰結である。 具体的には新造船の発注が増える事となる。 高ければ高いほど発注が増えてその結果は過剰船腹の度合いが高くなり運賃の下落が厳しくなることである。 10年危機説は史上最高のマーケットの置き土産であり、この格言の典型的な例であると言える。 200隻を超える造船契約のキャンセルが出ていると言われているが、簡単に解消するとは思われない。
2)
好況が長ければ不況も長期化 今回のブームが5年に及ぶ史上最長のマーケットであったが為に、造船所への投資が増え過剰設備となり過剰船腹を齎すこととなる。 既に、中国ではキャンセル船に資金を提供し内航船に模様替えや、キャンセルを止めさせるために船主へのファイナンス増やす等中国政府も韓国政府も造船業の救済策に大童である。 この種の救済策は過剰船腹を温存し、更に不況を長引かせることなり、好ましいことではない
3)
市況底流が悪化に変った場合回復には3/4年  海運ブームが終焉を迎えた時点で3年分程度の発注残があるのが普通である。 マーケット下落は過剰船腹の結果でもあるが、低落後も約3年は新造船が市場に参入してくる為 過剰の解消には、新造船の参入が減る3年程度の調整期間が必要となる。 個人的な見方であるが、マーケットのワンサイクルを5年から8年、いずれの場合も調整期間を3/4年と見ている。 長い8年の場合は船腹需給がタイトな時であり、短い5年の場合は過剰気味時で好景気が続かないことの結果である。 市況の底流が変わったことで、在庫調整が終わればマーケット回復するとの見方には抵抗を感じる。
4)
景気政策の限界  景気対策で景気が回復するのであれば喜ばしいことではあり政府の舵取りで不景気は姿を消す事となる。 然しながら、それは不可能に近い。 クラッシュを避ける為の衝撃緩和策に過ぎない考えるべきである。 財政赤字を3年も4年も継続することは不可能であるからである。 中国の場合、上海万博の工事が終了する開催時期も近づいており、要警戒かもしれない。
5)
ミニバブル  鉄鉱石の価格が上昇する可能性が高いから利殖の為の、輸入し港頭に仮置きすることで、マーケットを上昇させる方法が今年も再現できるかは、最終的にファンダメンタル次第である。 不景気は価格の振幅を小さくさせ、投資の見返りも小さくなりその分マーケットへの影響力は小さくなると思われる。 従って、理解苦しんだ昨年の様なブームのチャンスは減少するかもしれない。

6)

造船市況  マーケットの先行きに明確な警鐘を鳴らしているのが新造船の船価である。既に、ピーク時より40%ダウンが現れており、造船設備の過剰状況からして、半値になるのは時間の問題となっている。

7)

ドライバルかー部門の独歩高  ドライバルカーを除き、コンテナ船、PCC船、タンカーも深刻な不況となっている。 この独歩高の継続は不可能である。 ある程度の時間は必要だと思われるが、新造船のバルカーへの船種変更や改装で利益平均化、言い換えれば足を引っ張られることとなるからである。

8)

中国の鉄鋼業に就いての考察  拡大期の雰囲気は未だ残っているが、バブルの可能性が強く、安定成長期へ向かうと予想すべきだと思われる。
 
   
(四) 
結びとして

今年の展望は、昨年末の予測に比較すれば透明度は増したが、昨年の結果と比較すると上記の様にマイナス材料が多く悲観的な展望にならざるを得ない。 但し、ドライバルカーの市場の自律性は失われておらず、正常に戻りつつあると解釈すべきかもしれない。   この様な展望下で傭船部門に要求される事は、次の2項目である

1) 中国が主体で金融緩和下でのマーケットの特徴は、鉄鉱石等輸送貨物のコモディティ化であり、それに伴い市況の変動幅が大きくなっている事である。 海運人は、従来から輸送貨物の商品知識が要求されて来たがるが、今後は輸送貨物の価格変動の感性を磨くことも要求されることとなる。
2)
ドライバルカーとタンカーの不定期船部門は、「売り」と「買い」の時期の判定が、収益に大きな影響を与える。 「売り」は、売船、COA制約、貸船等があり、「買い」は、新造船発注、買船、傭船等がある。 これらを利用して収益を上げる事、即ち、安い時に「買い」高い時に「売る」事が不定期船部門の真髄でもある。 売買の時期の判断・判定が常時要求され、運賃が動けば儲かるチャンスが発生する。 平板に悲観論に浸る暇は無い筈である。
 
   

 

 

底流の変化と回復時期に就いて 2009年11月掲載
   

海運市況が大きく動いた場合、底流(ファンダメンタル)の変化に伴う市況の変化なのか、単なる在庫調整に伴うものなのかで市況予想が大きく異なる。 その判断ミスは企業の収益に大きな影響を与えることとなる。 

史上最高の市況を謳歌した海運市況が、昨年秋に暴落(collapsed)したドライ、それに半年遅れで係船点(not worth to operate)に近い水準で低迷しているタンカーも(一)底流が変わったと見るべきである。 この状況下で(二)何時回復する大事な問題となる。 (二)に就いては機会がある度に申し述べている通り市況回復・船腹需給調整には3/4年必要と見るべきである。 今回は新造船の発注残を中心に上記2項目を整理することとする。

   
(一) 底流が変わったと見る背景

1)

海運の9月号で「Economist(01/Aug/09)はバルカーを含め1,030隻(=現存船の10%)が係船中」と報じていると述べたが。 この状況は家運全体の底流が変化した証でもある。 コンテナ船、PCC, タンカー等が係船されている状況でドライバルカーも時間の経過と共に無縁であるわけがない。

2)

「山高ければ谷深し」の格言があるが、史上最高・最長のブームの後で、在庫調子が終われば回復すると予想するのは安易過ぎる考えである。 若干の反動があっても3/4年低迷は避けられないと思われる。 その理由は、海運業のドライバルカーへの投資が突出して効率が良いということになるからである。 資本利益率が1つの産業だけで高水準を維持することは不可能であり、海運業の一部門であるドライバルクだけが高水準を維持することはありえないのである。

   
(二) 
発注残(隻数)からの分析

    09年 10年 11年 12+年 合計(A) 現存(B) (A)/(B)%
  VLCC 68 63 78 8 217 510 42.5%
  Cape BC 143 316 161 43 663 680 97.5%

1) 以上の発注残から見て、今後3年間は新造船の増加で過剰船腹となる。 需要の急伸がなければ、回復には3/4年必要と言うこととなる。
2)
楽観論が許されないのは、既存船に対する新造船の増加率が非常に高いことである。 特に、CapeBCは僅か3年余りで略2倍増となる。
3)
史上最高の市況は、当然のことながら、発注が異常とも言える程増えた。 他方、中国造船業会が9月25日、昨年9月から1年間で181隻のキャンセル出た発表している様に新造船契約のキャンセルが多発しているが、過剰船腹による10年危機説は消えていない。 従来以上の過剰船腹を覚悟する必要がありそうである。
4)
史上最長の市況は、当然のことながら、造船能力の大幅増を齎し、過剰設備となっている。 然も、中国と韓国が強力な造船保護策を打ち出しており、建造能力がそのまま維持されそうである。 もしこの建造能力がそのまま維持されれば、恒常的な過剰造船設備と結果としての過剰船腹は避けられない。
   
(三) 
結びに変えて

1) 海上運賃は船腹の需要供給により決定される。 従って、需要側に大きな変革があれば、3/4年の長期化・短期化の何れが発生する。 短期化の例では、2000年にブームの後01年に低落、02年後半に上昇した今回の中国特需が記憶に新しい所である。
2)
中国が主役のドライバルカー市場の特徴の一面かもしれないが、投資対象が少ない不況時の量的金融緩和策は株式・不動産・国際商品取引へ投機資金を供給することとなりバブルを発生させる。 今年の春の中国による鉄鉱石の輸入増は鉄鉱石と言う国際商品への資金の流入であり、それがミニバブルを発生させ、CapeBCを中心とした運賃の上昇の理由であったと見るべきである。 ご参考まで、「中国の4兆元に景気対策のうち物流に流入したのは25%程度と言われている。 内訳は不動産30%、株式20%、国際商品25%」。 (出所は紹介下さい)
3)
いずれにしても、徒に悲観論に浸る時間はない。 中国主体で、金融緩和下では、何が起こるか予測困難なのがドライ・タンカーの不定期船市況であり、それが動きさえすれば儲かるチャンスがあるのが不定期船だからである。
4)
海運市場の自律性は維持されている為、さほどの心配はないが、問題はタンカーである。 人為的な価格の高止まりが荷動減を齎しているからである。
   

 

 

リーマンショックが中国の鉄鋼業と海運市況へ与える影響 2009年9月掲載
   

繰返し述べている通り「不定期船(ドライバルカー)市況を左右するのは鉄鋼業」である。 従って、今後の不定期船市況を占う上で避けられないテーマは、リーマンショックが中国の鉄鋼業に何を齎すのかである。 今回はオイルショック後の日本の鉄鋼業の推移と現在の中国の鉄鋼業を取り巻く環境と比較することで市況予測の一助を提供することとする

   
(一) 日本の鉄鋼業の推移

1)

拡大期の終焉と安定成長期の始まり − 73年の第一次オイルショックは日本の高度経済成長に黄信号が点り、同時に日本の鉄鋼の拡大期の終焉を迎える事件でもあった。 即ち、新規の製鉄所の建設計画が姿を消し1億6,000万トンの粗鋼生産計画の機運も消滅した。 拡大期の終焉は1973年の粗鋼の生産量1億2,020万トンが今回の中国の特需ブーム2007年の1億2,152万トン迄、34年間破れなかった事で説明が可能である。

2)

低迷期への突入 − 73年のオイルショックの後遺症が解消されかけた80年に第二次オイルショックが発生し低迷期が始まった。 それを決定的としたのが85年のプラザ合意による円高容認である。 自動車産業を除く輸出産業が大打撃を受け、輸出比率が高い日本経済の活力を削ぎ、結果、日本の鉄鋼が本格的な低迷期を迎えることとなった。

   
(二) 
リーマンショック後の中国の鉄鋼業に就いて

中国の鉄鋼業は、(イ)拡大期の継続、(ロ)安定成長期への移行、(ハ)低迷期への突入の何れの時期に立ち至っているのかが注目点である
1) 第一次オイルショック後、日本の鉄鋼業が安定成長を維持できた背景
イ)
輸出産業が健全であった − 80年代の前半のロンドンのカラーテレビの大部分が日本製であったこと、更に、省エネタイプの日本の乗用車が世界的に認知され始めたことである。その後の自動車専用船(PCC船)に対する需要急増したことで確認可能である。
ロ) 鋼材・セメント等の建築資材の中近東特需 − 原油高騰に伴う膨大なオイルダラーの誕生が中近東産油国の港湾設備を含めたインフラ用のセメント・鋼材等が日本から大量に輸出され、粗鋼の減産とはならず、不定期船の運賃の高水準を維持した。
ハ) 本格的低迷期は第二次オイルショック − 低迷が表面化したのは80年の第二次オイルショックと、それから5年後のプラザ合意による円高容認である。 輸出立国の日本は、高収益の投資案件が姿を消し、金融緩和はバブルを齎し、失われた10年となった。 その結果として粗鋼生産量はその後の20年(暦年)の館でその半分が1億トン切れとなった。 この低迷は不定期船主体の2社が吸収され6中核体体制が終焉を迎えた。
2)
リーマンショック後の中国の鉄鋼業 − 安定成長期か低迷期か
イ)
「中国の輸出産業の低迷 − コンテナ船の低迷に象徴されるように、米国のサブプライムローンによる金融不安は消費バブル破綻させ、米国向け輸出を中心に成長の活路を求めていた中国や日本を含めた東南アジアの国々の経済が悪化した。 輸出産業への投資急減や破綻が、粗鋼増産にも悪影響を与えるのは必至となりつつある。
ロ) 4兆元景気対策とオイルショック後の中近東特需 − 第一次オイルショック後の中近東特需の代役を務めているのが、4兆元の景気対策である。 大きな違いはパナマックス以下の鋼材等の中近東向けの海上輸送の需要増を伴わない政府資金によるローカル的な需要増であり、その継続性不安である。
ハ) 景気対策の効果の限界 − 2兆ドルを超える外貨準備を誇っているとは言え、中国が現在並、或は、これ以上の景気対策を継続可能かである。 低迷期を齎したプラザ合意後の日本の景気対策が腰砕けとなりバブルだけを残すと言う結課を齎し、その効果が限定的であったのと同じ轍を踏むことになり兼ねない。
   
(三) 
結びに変えて

中国の鉄鋼業は、安定成長期を迎えたのか、低迷期に突入したのかが最大の問題である。
1) 低迷期が近い理由
イ)
粗鋼急増の反動 − 中国の粗鋼の増産が、史上例がない大幅かつ急速であったことで反動的に短期の安定成長の後、低迷期に突入したとしても不思議ではない。
ロ) 中国の貿易収支の悪化 − 日本の自動車の様な貿易収支を支える程の輸出商品が少なく黒字維持の困難性も指摘されている。 社会主義政治体制でも大規模景気刺激策の継続にも影響を与えるかも知れない。
ハ)

コモディティ(国際商品)価格の上昇 − 中国経済の回復傾向に牽引され、不定期船市況を含め、楽観論があるが、金融緩和策によるミニバブルの可能性も否定できない。

ニ)

Sea of troubles − Economist(01/Aug/09)はバルカーを含め1,030隻(=現存船の10%)が係船中と報じている。 この状況下、不定期船だけが高水準を維持するのは困難。

2)
不定期船市場の自律性維持 − 過度の悲観論と楽観論の否定
イ)

過去1年でこれほどの暴騰と暴落を発生したことは底流の変化である。 従って、在庫調整が一巡したら市況が回復すると言う楽観論は安易過ぎる。
ロ) 又、悲観論の中に自律性を消滅したオイルショック後のタンカー暴落と通常に発生する暴落と差別をしない考えがあるが、現在は後者である。
ハ)

市場の自律性は維持されていると言う意味は過去5年の暴騰した市況から正常な市況へ戻ることである。

   
(四) 
結 論

1) 以上の様に中国の鉄鋼業が低迷期に入る可能性は強いが、現在、粗鋼の減産もなくBDIも3,000前後を維持していることは、安定成長期であると言うべきかも知れない。 そうであれば、低迷期突入には日本の鉄鋼業が遭遇した第二次オイルショック類似の経済事件の発生が必要かもしれない。 目下その第一の候補は、現在のミニバブルでありそれが破裂した時かもしれない。 何れにしても、中国の設備投資とそれを左右する世界経済次第である。 推移を注意深く注目したい。
   

 

 

深刻化が小休止したドライ市況に就いて 2009年7月掲載
   

5月号の原稿で「BDIは1,000前後から2,500前後で推移し世界の景気次第では下方の張り付く可能性が強いと予測したが、6月3日現在約4,300と予測を2,000ポイント超え、拙劣な判断力を公にする羽目となった。
今回は、この予想外の事態に就いて一般的に流布されている市況上昇の要因を整理し、それにコメントすることとする。 但し、翌日には報告される日々の成約のデータとは違い荷動きのデータの入手には時間が必要で憶測が避けられない事予め承知置き願いたい

   
(一) BDI上昇の理由

1)

中国の鉄鉱石輸入の急増とその結果としての中国での揚荷待ちの船舶が6月初めに70〜80隻となり船腹供給がタイトとなった為である。 08年と09年に中国の鉄鉱石の輸入量は下記の通りで急増している。

(単位100万トン)

 

Jan.

Feb

Mar

Apr

Jan/Apr

May/Sep

Oct/Dec

Total

2008年

36.8

38.2

35.7

42.8

153.5

153.7

136.8

444.0

2009年

32,7

46.7

52.1

57.0

188.5

565.5

2009年は2月から4月は前年4月のピークの記録を3ヶ月連続更新した、1/4月の累計は1億8,850万トン、年率5億6,550万トンとなり、昨年を1億2,000万トン強、即ち、月間で1,000万トンを上回る輸入増となった。 海運市況へ影響を与えるのが当然である。
   
(二) 
輸入急増、市況急騰の理由
1) 中国の4兆元に及ぶ景気対策と四川大震災の復興計画の2年間への繰上げ等に伴う需要増による。
2)
中小鉄鋼ミル(日本と違い生産比率が非常に高い)による(i)景気悪化による鉄鉱石のスポット価格と海上運賃の低落によるCIF価格低落を利用しての輸入増、(ii)国内産の鉄鉱石より安価となった輸入鉱石への切替えによる輸入増である。 鉱石の大手生産者によるCIF契約増傾向が拍車を掛けていると言われている。 更に、経済発展が中央政府の重点政策となっている内陸部にある国内鉄鉱石の購入を簡単に削れるのか疑問である。
3)
中国の経済は最悪期を脱した。 それに対応して鉄鉱石・石炭・原油などの資源価格も上昇を齎している。 ドライバルカー市況の回復はその一連の動きの端緒である
   
(三) 
上記に就いての私見

1) 日本の失われた10年の例の通り、資金量に限界があり公共投資等の政府支出による景気対策には限界がある。 もし可能なら、不景気は永遠に姿を消すこととなるからである。 又、復興需要に就いては神戸大震災復興需要が景気に影響を与えることにはならなかった。 従って、四川の復興需要が海運市況にまで影響を与えるとは考えられない。
2)
価格が流通量に影響する機能を全面的に否定するつもりはないが、海運の場合、本来鉄鉱石の価格と運賃の低落は需要減の結果であるのが通常のパターンである。 価格の低落による需要増、運賃上昇は本末転倒であり短期的な経済現象であると言える。
3)
中国の経済成長を牽引し、運賃市況を高騰させたのは、世界の工場と言われ輸出を目的とした沿岸地域への設備投資であった。 従って、中国の本格的な景気回復には欧米の景気回復による輸入増が必要である。 現段階ではその気配は全くないと断言してよさそうである。 それを立証するものとして、電力不足が一時大きく騒がれたが、5月22日のFTは「今年度の電力の消費量は対前年比マイナス2%減少する」との報道がある。
   
(四) 
結 論

1) 鉄鉱石の輸入に比し粗鋼増産は微増である。 従って、輸入増大に対応して粗鋼増産が定着すれば、可なりの市況上昇はあるかもしれないが、鋼材市況より見て増産の可能性は少ないと思われる。
2)
戦後最大の不況が、短期間に解消するとは考えられない。 同様に歴史的に最高のブーム経験した海運市況が1年足らずで回復するとは考えられない。更に、本格的に景気が回復して物流に影響を与えるには数ヶ月必要である。
3)
今回のドライ市況の上昇は、短期的に予想以上のWS300まで高騰した07年末のVLCCの市況と似ている。 但し、世界経済の大不況下での市況上昇のエネルギーは07年末とは比較にならならない程弱い故、短期に終わる可能性がより一層強いと思われる。
4)
2003年以降の海運ブームの特徴である市況の振幅の強大化の傾向が市況低落時も変わっていない様である。 改めて、具体的な数字での運賃の予測の難しさとミスリードの危険の大きさを再認識させられた。
   

 

 

深刻化が増大する海運市場 2009年5月掲載
    現在の世界経済の不況は100年に一度の経済危機であると言われる様に深刻な状態である。 それを裏付けるかの様に3月31日OECD(経済協力開発機構)が、世界主要国の2009年の実質経済成長率を次の通り発表した「日本:△6.6%、米国:△4.0%、 EU:△4.1」とし、回復は10年後半との見方を発表した。
一方、アジア開発銀行(ADB)もアジア・太平洋地域(日豪等を除く)の国内総生産(GDP)成長率が3.4%(07年:9.5%、08年:6.3%)に減速し、97年のアジア金融危機以来の低水準となる。 先導役であった中国・インドも減速すると発表した。この様な世界経済の深刻な実態が海運市場にも明白に現れている。 今回は昨年後半の報告を参照しながら整理することとする。
   
(一) ドライ市場

1) 海運08年11月号で「下げ幅が大き過ぎたのと急激過ぎた嫌いもあり…反動高が来るのは間違いあるまい。 但し、今回の市況軟化が底流の変化に伴うもので反動高には限界があり、世界の経済次第では反動が極小化する可能性が強まることを否定できない(10月7日記)」以上の観点からBDIを追跡結果、12月5日が最低の663、3月10日が低落後最高値の2,298であった。 この数字から言えることは、海運09年1月号の「3/4年低迷が続いた1985年の市況パターンに似ていることが懸念される。(12月9日記)」の繰返しとなる。 即ち、BDIは、当分、1,000前後と2,500前後の狭い範囲で低迷が続き、世界の景気次第では低い方に張付く期間が長くなる可能性が強いと言うこととなりそうである
2)
(2) 昨年と同様、西豪州が洪水で、鉱石のシッパーから数日間不可抗力が宣言されたが、市況への影響はなかった事、新年度の原料価格が下がる2Q/09のFFAも現在の市況より20%以上低落しており、鉄鉱石の需給が緩み原料手当てに狂奔し市況を高騰させる事態とは程遠いと言うことをはっきりと示している。
   
(二) タンカー市場
1)
順調に原油の輸入量を増加させて来た中国にも陰りが見えて来た。 中国の今年1/2月の原油輸入が△13%、2月だけでは△15%と報じられた。 08年が1億7,900万トンであり年率13%減は2,000万トン減となる。 VLCC10約70航海に相当する。
ご参考まで、過去6年の輸入実績は下記の通りで2008年迄は順調に増加していた。
Year 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
Million Ton 91 123 127 145 163 179
(As per Matsui & Co., Ltd., VLCC Market Report)
2)
それに呼応するかの様にAG積VLCCの1/3月のスポットの月当たりの成約数が100の大台を割り、15%減と低迷が続いている。
Month Jan Feb Mar Total %
2008年 92 85 80 257 84.3%
2009年 104 104 97 305 100%
3)
日本の原油輸入量も昨年後半より輸入減が強まり、今年1月は昨年同月比438万kl(=19%)減の1,871万klとなった。
4)
目下マーケットを支えている50隻と言われているStorage用不安定要因である。
   
(三) 結びに変えて

1) ドライは社会主義体制で外貨準備高が世界最大の中国が公共投資と官有企業の支援策等による景気刺激策(目下4兆元)で8.5%以上の成長率が維持可能なのか、引いては不定期船を左右する粗鋼の増産継続が可能となるのかが最大の注目点である。
2)
タンカーは不需要期を前にして急激に悪化しており心配である。 1/2月(3月も減少予想)の中国の13%の原油輸入減に伴う一時的な軟化現象なのか、世界経済の深刻化に伴うファンダメンタルによる構造的な低落なのかが注目点である。
3)
世界の経済危機は脱却の糸口が見えず、その深刻度は益々強まっており、海運も無縁ではなく不安材料が増えても減ることは無さそうである。 市況の底流は明らかに変化した見るべきで市況回復には3/4年の調整期間が必要と思われる。
   

 

 

 

3/4年低迷が続いた1985年前後の市況と現在との対比 2009年3月掲載
    経済現象でよく言われる事で「歴史は繰り返す」がある。 経済現象の一分野である海運市況にも同じことが言える。 1月号(12月9日記)で今回のドライ市況は長期間低迷した1985年頃と似た兆候があると懸念を申し上げたが、紙面の都合で説明不足となった。 今回はその続きとして当時の背景の紹介と現在との比較をしながら整理することとする。
   
(一) 1985年の状況

 85年は現在のBDIが導入された年である。 ドライ市場で圧倒的な影響力を持っていた日本の正月明けの1月4日を1,000としてスタートした。 この年の経済状況は2回に亘るオイルショック(73年と78年)により原油価格が高騰し、世界的なインフレ(日本は狂乱物価)とその反動で世界経済は不況の真最中であった。
1) タンカーは瀕死の状態で市場の自律性は完全に消滅し海運のファイナンスの中心であったロンドンの信用危機が噂された。 その回復には20年以上の時間が必要であった。
2)
ドライは鋼材とセメント需要急増で船腹需要(除くケープサイズ)か急増した中近東特需が終わり閉塞感の強まった年であった。 港湾設備が貧弱で揚荷をヘリコプターでする状態であった。
3)
中近東特需の影響でハンディマックスへの期待感が高まったこととタンカーが壊滅状態で過剰設備を抱えた日本の造船業はその打開策でもあり、大量のハンディマックス(150隻程度)が契約されたが、これが為に、船腹需要減と供給圧力とでドライ市況の先行きに不透明感が強くなった時期であった。
4)
BDIの1,000前後の水準が82年の後半から87年の前半までの4/5年間継続した。
   
(二) 1985年と現在の類似点と相違点
1)
【類似点】
原油の高騰によるインフレとその後の世界的な経済不振。
規模の違いはあるが、何れも高度成長の歪の顕在化である。85年は日本中心の高度成長であり、今回は印度・中国等のBRICsの大集団的高度成長である。
2)
【相違点】
世界的な金融危機は存在しなかったが、今回は100年に1回の大不況で大恐慌の再来と言われる程の深刻である。
省エネの日本車が脚光を帯びPCCの需要増となったが、今回は日本車も含め世界的な販売不振となっており、中国の自動車産業の新規投資分が過剰設備となった雰囲気である。
物流を伴う中近東の特需は再現せず、バブル経済のシンボルとなったドバイの不動産投資が目立つ程度でドライ市況には直接影響を与えることは少なかった。
将来の保証はないが、タンカーは暴落していない。
3)
【今後のドライ市況に就いての注目点と結論】
ドライ市況を支えていた中国の景気は北米向けの輸出の回復が鍵となるが、どの程度時間が必要なのか。 更に、輸出が急減した中国への直接投資が何時回復するかかである。
輸出減を穴埋めする為に大幅な内需拡大策が必要であるが、その拡大策が短期間で成功するのかである。
目下、ドライ市況へのプラス材料は中国と米国の多額の公共投資である。 日本の失われた10年とは違い量とスピード面で思い切った景気対策が採られているが、米国の公共投資によるドライへの影響は、バイアメリカンの政策も垣間見えておりセメントの輸入増位しか期待出来そうにない。 従って、プラス材料は中国の公共投資(4兆元)しかない。 中国の粗鋼増産・ドライ市況上昇に迄効果を齎すのかが注目点である。
警戒すべきは遅れてブームとなったタンカーが需要減で価格が1/3となった原油と同様に運賃も低落するのかである。 海運全体が出口の見え無い暗雲に閉ざされるだけに心配である。
    結論として、1月号同様に「3/4年低迷が続いた1985年の市況パターンに似ていることが懸念される」の感が強まっても弱まる事はなさそうである
   

 

 

 

天国と地獄を経験させられた2008年のドライ市況に就いて 2009年1月掲載
    海運業はその投機的な特質から天国と地獄が隣り合わせている産業だと言われている。 CapesizeBCの傭船料の例で、天国は6月成約のDailyUS$250,000であり、地獄は11月下旬成約のDailyUS$1,000である。 平時で 短期間にこれ程激しく暴落した商品は他に例がないと思われるし、海運でも例がない。

 海上物流の最大の貨物でドライ市況に最も影響を与えるが、非鉄金属やスクラップや石炭に比し硬い商品のイメージ強かった鉄鉱石が従来とは異なる商品性向を示し強烈なインパクトを海運市況に与えた。 今回は鉄鉱石の性向の変化と海運市況の関連を整理する事とする。
   
(一) 従来とは異なった鉄鋼石の商品性向

 経済的要因以外でのドライの市況を支配するのは今も昔も鉄鋼業である。従って、今回のドライ市況の低落も中国の鉄鋼の異変に起因したものである。
1) 鉄鉱石が投機商品化したのである。 今年度の鉄鉱石の価格が夏頃30%以上の上昇が必至となり鉄鉱石が安定的で高収益可能な投資対象となったことでヘッジファンドやトレーダーが(在庫)投資を急増させた。 結果は年度末の駆込み需要が期半ばに早まり秋の海運市況の暴騰と9,000万トン有余の鉄鉱石の港頭貯鉱となった。
2)
投機商品化は流れが逆回転すると高リスクの商品となる。 日本の高度成長時代ではなくて現在発生している事は中国鉄鋼業の上位5社でないとL/C開設が困難となっていると言われている事である。 鉄鉱石を一時的に保持した場合、売却の困難さとその後の価格下落の危険に晒される事となるからである。 因みに「鉄鉱石のスポット価格は最高値が3月の$197で現在が1/3以下の約$60」である。 貨物の1単位が大きい分リスク大きく信用力の小さい企業は経営の存続が危機に瀕することとなる。
3)
L/Cの問題は中国の鉄鋼業が企業の近代化(集約/統合)が足早に進む可能性が強くなっていることである。中国は上位66社で80%である(日本は上位5社で80%)。この様な群雄割拠の状態は通常は数回の不況を経て集約されるが、鉄鉱石の投機商品化が信用力の小さい小規模の企業(生産性も低い)が一挙に淘汰・吸収・集約化に進む可能性が高い。 但し、失業問題の多発の可能性がありどの程度推進出来るのかは今後の推移を見るしかない。
   
(二) 以上の観点から今後注目すべき点は下記の通りとなる

1) 鉄鉱石の在庫が軽減され適正在庫になれば短期的に市況は回復するのか。
2)
不安定で激しい市況は、今回限りなのか、中国主導であり同様な市況が繰り返されるのかである。
3)
中国鉄鋼業が構造的に抱えている生産性の低い小規模のミルの存在である。 2005年半ばで1,500社以上と言われ「上位66社で生産比率が現在でも80%」と言われているが、この経済不振で集約が本格化し長引くのか、それとも政府の保護政策により中途半端で短期間で終わるのかである。
   
(三) 結びに変えて
1)
【悲観論】
従来から市況の暴落は海運市場の混乱を呼び、企業によっては(既に散見されている)経営破たんを引き起こす。今回は、短期にしかも落差が激しかっただけに深刻な混乱が発生してもおかしくない。
100年に1回と言われた今回の最長・最高のブームが簡単に回付するとは思えない。
2)
【楽観論】
本来船主側の経営破綻が新造船の契約破棄で調整されていたのが、今回は造船業の破綻で契約破棄されており、既に2/300が契約破棄された噂されている。 破棄の隻数が多いだけに短期に済みそうである。
中国主導の海運市況は今回が初めてであるが、日本ほど悲観的とは思われない故その回復は従来より短い可能性がある。
3)
【結 論】
海運不況の入り口に到着したばかりの時点であることと米国発の金融危機が不透明な時期での回復予想も時期早尚であるが、私感ながら、3/4年低迷が続いた1985年の市況パターンに似ていることが懸念される