エルニーニョ現象(El Nino)による海運市況への影響に就いて 2006年11月掲載
   
(一)  プロローグ

1) 今年の8月にエルニーニョが発生し、当分この状態が続くと発表された。 これは赤道に沿う西向きの貿易風が弱まった事により高温の海水がペルー沖に滞留する事により発生すると言われている。 この結果、栄養分が豊富でプランクトンを育てる深海の低温の海水が海面に上昇できなくなり魚がい集せず、飼料用であるアンチョビが不漁となる。このアンチョビ代替の飼料用穀物への需要増と異常気象による穀物の不作で遠距離ソースからの輸入増とによる船腹需要増がドライ市況にはプラス要因となることが多い。  
最近は地球の温暖化現象に話題の主役の座を譲っていたが、海運にとってエルニーニョは無視できない気象情報である。今回はこの問題を中心に据えて整理することとする。
   
(二)  エルニーニョ影響

1) 97年のニューヨークのクリスマスが摂氏4.4度高くなった。 98年の長野オリンピックが暖冬による雪不足で開催が危ぶまれた等記憶に残る暖冬が発生した。 これらの例の通り、エルニーニョは日本や米国の暖冬の可能性が高くなる。 暖房用の石油の輸送需要を減退させることとなり、タンカーへマイナス影響を与えることとなる。
2)
豪州を筆頭に南米・南アなど南半球が旱魃となる。97年は豪州の旱魃はインドネシアを含めた為、大規模森林火災を惹起した。 既に、今回は豪州小麦の不作予想で先物価格が上昇している。 豪州の小麦不作は印度・アジア等の諸国が遠距離の南北のアメリカ大陸からの輸入増となる。 トンマイル増による船腹需要が増える事となる。 
小麦価格の状況については、FT on 29/9/06を下記紹介することとする。
「GC(International Grain Council)が、07年6月まで(06/07年度)の世界の小麦の生産量を前回の593mM/Tから588mM/Tonsへ下方修正した。 05/06年度予想618mM/Ttonsと比較では30mM/Tons減となる。この発表境にCBOT(Chicago Board of Trade)での米国の小麦の先物価格が9月28日1997年4月以来の9年ぶりの$439/bushelの高値をつけた。 これは対前年比30%、前月比では20%の価格上昇となる。 減産の主な理由は豪州が旱魃で生産量が20mM/Tonsが8〜5mM/Tonsの減の12-15mM/Tonsの生産となると下方修正がなされた。 更に、米国、欧州、アルゼンチンでも下方修正なされている。」
3)
今年は台風が予想に反して穏やかであった。 科学的根拠がない不学な素人の想像であるが、これはフィリッピン近海の海水温度がエルニーニョで低下し台風の発達が抑えられた事によるものと言えそうである。カリブのハリケーンも同様に穏やかに終ったが、カリブ海は別として西大西洋の海水温度が低くなったと言う同じ理由によるものかもしれない
 
   
(三)  エピローグ

1) 地球温暖化もエルニーニョ現象も気候を凶暴にする傾向が強い、旱魃と洪水、竜巻やハリケーン・台風の凶暴化、天候不順による穀物不作等が多発する可能性が高い。 この2つの凶暴化要因の重複が天候不順を増幅させるのか、台風・ハリケーンの発達を抑える等の抑止力となるのか、新たなテーマを与えた。 推移を注目したい。
   

 

 

バイオエタノールと海運市況 2006年9月掲載
    WTIが$78.40の最高値を記録する等原油の価格の高騰が続いている。 これは代替燃料が市場に参入する機会を与える事となる。 石油の代替燃料と環境問題の両面から現在脚光を浴びているのがバイオエタノールである。 原料は米国ではトウモロコシ、ブラジルではサトウキビ、欧州では菜種と低品質の飼料用小麦である。今回は、増産が続くバイオエタノールとその海運市況への影響を整理することとする。
   
(一) 新たな展開が始まった穀物市場

1) 【現状 ― 記事の紹介】
「穀物の燃料油生産で取引量が急増」6/July Financial Time by Mr. K. Morrison で、世界最大のシカゴ商品取引所で小麦やトウモロコシや菜種が農産物と同時にエネルギー源であると見られ先物取引量が急増している。 大部分がバイオ燃料部門からの参入である。 
欧州最大の農産物取引所のEuronext.Liffeも同様の変化が起こっている。 (イ)低品質の飼料用小麦と(ロ)菜種である。 (イ)は主にエタノール生産者によるヘッジであるが、小麦生産者によるヘッジも増えている。 EUの小麦価格維持政策が3年以内に廃止され価格低落の危機回避のためである。 既に、英国Wessexの穀物協同組合が09年から小麦を100万トン(英国の小麦の生産量は1,500万トン)使用し1億3,000万リットルのエタノールを生産するプラントを建設中である。 菜種(ロ)はEuronext.Liffeの最大の取引商品であり、欧州では米国とは逆にガソリン精製設備が過剰でディーゼルオイルが不足している為、バイオディーゼルオイルの重要な原料となる。 この菜種の取引量も急増し価格も過去2年で最高値の255.5ユーロを記録した。 現在需要は5%増の5,000万トン、供給(生産量)は4,780万トンで供給不足となっている。    
一方、OECDの報告によると政府の補助が無ければ化石燃料とは競争できない。 食料部門とエネルギー部門の争奪戦で価格上昇を齎す等種々のインパクトを与えると警告している。
   
(二) 2) 穀物とエネルギーの競争激化

1) 米国が05年8月環境汚染対策で、ガソリンと混合する為のエタノール増産を義務付けた。 「現在ガソリンの混入率は30%を超え、05年のエタノールの生産量はブラジルを追い越した」と言われている。 近い将来「エタノールへの需要増でトウモロコシの輸出可能な量は生産量の1割程度に落ち込む」と言われている。 一方、最消費国の中国は、05/06年度が約400万トン、06/07年度が約300万トンの輸出国であるが数年のうちに輸入国となる。 恒常的な供給不足と価格高止まりが非常に危惧される状態となっている。
2)
日本の菓子業界が砂糖の値上がりでお悲鳴を上げている。 世界の砂糖の生産関連の詳細はFairplay(20/Jul)のSweet competition参照、昨シーズン世界最大の生産国のブラジルはサトウキビから砂糖25 M tons エタノールが18 M tonsが生産されていたが、この生産比率が逆転しエタノール増産が砂糖の品薄と価格上昇を齎しているからである。 
奴隷貿易の受入の中心地であった米国南部やキューバ等のカリブ海、印度(世界第二位の生産国)、モーウリシャス諸島、フィジー、スワジー等のアフリカ南部等が増産に走ることとなる。 奴隷貿易全盛時代の頃の熱気が再発しそうである。
   
(三) 海運市況への影響に就いて

1) 穀物が海運市況に影響を与えたのは60年代の2回のソ連小麦不作と95年(北朝鮮が食糧危機の年)の中国のトウモロコシ不作による輸入国への転落であった。 最近、ドライ市況に影響を与えるのは小麦ではなくトウモロコシである。 高価格は短期的に荷動き減となり市況にはマイナスである。 米国と南米の増産でどの程度穴埋め出来るのか、 価格水準の高止まりで新しい生産地が何時頃、何処で開発されるのかが焦点となる。
2)
砂糖増・減産はスモールハンディの貨物であり、ドライ市況には大きな影響は無いと思われる。
3) タンカーへの影響は石油製品の最大の消費国の米国と欧州がエタノールの生産国となることと欧州・米国の相互補完関係にあるガソリン荷動きとディーゼル荷動きの伸率減でPC船の需要にマイナス要因と思われる。 但し、エタノールは飽くまで石油の補完的立場に過ぎず、運賃や原油の市況価格を左右する事とはならないと思われる。
   
(四) エピローグ

1) 「サトウキビやトウモロコシは光合成でCO2の吸収効果はあるが、機械を動かす燃料や石油を原料とした肥料・農薬製造や発酵や蒸留にもエネルギーを使う故、温暖化対策とはなっていない。 温暖化対策には自動車の小型化が肝要である。」25/7朝日掲載が、正しい見方であろう。
2)
今回の原油高騰は運輸コストと石油を原料とする商品の高騰の他に食料の高騰を齎す。 最も危惧されるのは、既に、食糧危機の国々の飢餓の深刻化である。
   



 

海運市況高騰から3年目を迎えて 2006年7月掲載
    現在最も注目される問題は、長引いた鉄鉱石の価格交渉が中国を除き妥結した事であり、それが海運市況にどの様に影響を与えるかである。 他に、市況高騰から二年半経過すると新規の材料に事欠きそうだが、それでも種々の問題を抱えてながら変化している事に変わりは無い。 今回は、やや纏まりを欠くが、2の項目を中心にコメントする事とする。
   
(一) 原料価格交渉が妥結

1) 例年より約2ヵ月遅れとなったが、鉄鉱石は中国向けを除き昨年の71%値上げより低く5月下旬に19%値上げでほぼ決着した。 セラーズマーケットだけに、中国も追認せざるを得ないと思われる。 一方、原料炭は3年ぶりに8%の値下げとなった。
2)
海運市況に最も影響を与える中国の第一四半期の鉄鉱石の輸入量は8,092万トンで昨年同時期比1,760万トンの28%増であり、3月は2,951万トンと史上最高となるなど順調であったが、原料炭の値下げ予想が足を引張る形となり年度末の駆け込輸送が昨年ほど顕著ではなく、ケープの運賃も3月上旬をピークに今回の価格決定まで軟化し続けた。
3)
価格交渉を有利にする為交渉期間中輸入量を抑え、価格決定次第輸入が急増・市況上昇の予想があった。 6 月9日現在ではその帰趨は不明のままである。 但し、この影響で今年の夏枯れは、回避、又は軽微に終わる可能性があると言えそうである。
   
(二) 3年目になると何が起こる

1) カリブのハリケーンと太平洋の台風が今年も猛威を振るっても、3年目となると、経験上、原油やガソリンの在庫の増し積みされる筈である。 過去二年のVLCCや昨年のPCタンカーの市況を暴騰させる様な事態をそのまま放置する事とはなるまい。
2)
船腹不足による極端な運賃の高騰、原料不足による価格の極端な高騰を経験した後だけに冷静な傭船が可能となり、必要以上のヒートな状態は発生し難くなる。
3)
この二年間で船腹増は次表の通り、通常の新造船と市況高騰によるスクラップ減が主因
 
3月末
2004
2005 2006 2004/6 2004 2005 2006 2004/6
船腹 量
305.2 328.0 351.8 277.8 293.2 309.5
船腹増加率 7.5% 7.3% *15.3% 5.5% 5.6% 11.4%
Bulkerは15.3%増*とこの前の半年分と時間の経過と共に更に増加する故無視できない
   
(三) 結びに替えて

1) 海運市況は04年と05年に非常に高い山が二つ現れた。 「株市場の場合、高い二の山が現れた場合、3回目は期待薄だ」と言われている。 既に高い山が二回現れた海運市況にもこれが当てはまるのか注目したい。
2)
海運3月号の「中国の粗鋼増産によるドライ市況へのインパクトが小さくなっていることは否定できない。 新造船の市場参入とスクラップの休止で船腹供給圧力が強まっているからである。市況の山が前回より低く、上下の振幅が小さくなり、平均運賃も下がっていくと言う市況軟化の通常のパターンの発生は避けられない」中国の3月の鉄鉱石輸入量が最高を記録しても市況が軟化した事は、この記事の再確認が可能の様である。 但し、夏枯れの回避、又は、軽微で済みそうである。
3) 格差是正の為の中国の奥地の公共投資が重要視されているが、粗鋼増産を継続させ海運市況を更なる上昇方向に引っ張るには役不足と思われる。
4) 結論として、上記は過去二年間との対比の問題であり、中国特需による船腹不足傾向の底流は解消されておらず、スポット運賃のコスト割れの低落が瞬間的にはありえても、堅調なマーケットが1年以上継続する可能性が強いと思われる。 但し、
●原油価格が$90を超えて高止まり、オイルショックの再来で世界経済に混乱が起きる事とならない。
●現在の世界的な株価の低落傾向が、世界経済の低迷の始まりとはならない。
●中国の経済の急成長で社会的な歪みが問題化しない事が前提となる。
   



 

世界的な異常気象に就いて 2006年5月掲載
    海上を活躍の場とする海運業は、風雪・風雨・潮流等の自然のとの戦いでもあり、常に気象の影響を直接・間接に受ける。 異常気象はこの影響を通常より強く受ける事となる。  

海運に対する直接影響は台風等の時化で船舶運航に支障をきたす事である。 間接的には災害に伴う積揚港での滞船や積揚港の変更、それが長期すれば物流に変化を来たす。 又、異常気象は穀物の作柄に影響を与え穀物の物流の変化で海運市況に影響を齎す事等である。  

今回はデータとして残す為、最近の異常気象とその影響を日記風に取り纏める事とする。
   
(一) 過去二年の異常気象の例

 
-04年- ■日本に史上最多の11個の台風が上陸した。
  ■釜山のコンテナヤードも大きな損害を受けた。
  ■カリブも大型ハリケーンが通常より多く発生した。
-05年- ■南九州が、衰退しない侭、長時間居座る亜熱帯型の台風で大きな災害を被った。
  ■カリブ海にはカテゴリー5の台風が二度に亘り、New OrleansとHoustonに上陸した。
  特に、New Orleansに上陸したKatrinaは海運のみならず、米国の弱点を晒す歴史に残る
  ハリケーンとなった。
  ■年末から欧州と日本が寒波に襲われた。
-06年- ■4月初めに鉄鉱石の世界最大の積出地の西豪州がカテゴリー5のサイクロンに襲われ、
  一時的に港が封鎖された。
  ■中欧から東欧を流れるドナウ川が厳冬の反動とも言える雪解けで洪水が発生した。 
  寒波による低温と地球温暖化による高温とが入れ替わる時期に何が起こるのか一つのヒントを
  与えてくれた形となった。
   
(二) 以上の異常気候が齎したもの

 
-04年- ■短期間で終わったが、台風による被害で釜山のコンテナのハブ港のとしての地位を
  脅かしかねない事態となった。
  ■台風とハリケーンがVLCCの稼動率を低下させ、タイトであったVLCCの供給を更に厳しくさせ
  WS350を超える歴史的な高値を記録した。
-05年- ■カリブの製油所のハリケーンによる損害の後遺症で、米国国内の製油所の能力不足を
  露呈させPCのマーケットを暴騰させ、欧州の寒波の襲来と相俟って春まで高水準を維持させた。
  ■米国のon shoreの油田の損傷と、その回復に1年程度必要との事で原油の輸入が増えた事と、
  その後の日欧の寒波がVLCCの運賃の堅調に推移させた。
  ■VLCCは前年同様、或はそれを上回るハリケーンが発生しても、最高値はWS100安値のWS250に
  止まった。
-06年- ■406年 西豪州のサイクロンによる被害はなく閉鎖の期間が短かったこともあり
  ケープサイズの市況への影響は殆どなかった。
   
(三) 異常気象の原因は(3月号参照)

  欧州の寒波は海流の変化によるものでありハリケーンの凶暴化は海水温度の上昇とそれを助長する海流の変化によるものであり、その遠因は地球の温暖化だと言われている。
   
(四) 市況への影響は

  ■異常気象の原因が正しいとすれば、今年も900ヘッドパスカルを下回るカテゴリー5級の台風・ハリケーンの来襲と来冬の寒波の襲来の可能性が高いと考えざるを得ない。

■一般的となっている「just in time」での在庫減の政策は、自然の猛威に曝される海上輸送を伴う原材料には不向きである。 05年の米国の原油とガソリン在庫は前年より増えていたが、Katrina強烈さが打ち砕いた結果となった。 この過去二年の経験で在庫上積みが更に進むと思われる。 昨年並みのハリケーンが来ても、VLCCの高騰もPCの緊急避難的な暴騰も昨年ほどの事態にはならないと思われる。

■昨年スペインの旱魃、今年の英国の旱魃とフィリッピンの豪雨による地滑り等、異常気象と思われる気象が多発している。 この旱魃と洪水多発は穀物の作柄に影響を与え、穀物輸送の活況による海運市況に影響を与える可能性が高まりそうである。

■長期的に地球温暖化でミッシシッピー流域やアマゾン流域の乾燥化が進むと言うシミュレーションがNHKのTVで報じられたが、砂漠化の拡大と共に今年その兆候が奔りとして現れるのか注目される。
   


 

2005年度の3大事件 2006年3月掲載
    2005年は下記の3つの大事件が発生した。今年の海運市況はこの3大事件の影響を受けることは必至である。 今回はその現状と問題点に就いて整理することとする。
   
(一) 3大事件とは

1) 中国の粗鋼生産量が8月以降月間3,000万トンを超え年間3億4,936万トンを記録
2)
ハリケーンKatrinaがニューオリンズに上陸し巨大な損害を与え、恒常化が心配
3)
原油価格が$70.85と史上最高値を記録、オイルショック再来の問題提議となっている
   
(二) その現状

1) 【中国の粗鋼生産量とドライ市況について】
12月の中国の粗鋼生産量は史上最高の3,200万トンを超えた。鉄鉱石輸入量は前年比6,171万トン増2億7,526万トンを記録、必然的に12月の鉄鉱石の輸入量も史上最高を記録したものと思われる。 処が、ドライ市場へのインパクトは小さくなっている。 例えば、1年前にこの数量の粗鋼と鉄鉱石の輸入量が公表されたらそれだけで市況は暴騰したはずである。 船腹需要が順調でも新造船の竣工とスクラップ休止で船腹過剰傾向が顕在化しつつあることを市場が示唆している 。
2)
【異常気象とも言えるカトリーナ級の発生が恒常化するのかについて】
2年連続強烈なハリケーンによる損害を受けたカリブ海が3年連続して被害を蒙り恒常化するのかである。 もし3年連続して発生したらニューオリンズやヒューストンが天然ガスと石油製品のセンターとしての機能を見直す機運が生まれる可能性があり、大いに危惧される所である。 一方、今年の冬の暖冬の予想が逆転し、欧州と東北アジアに強烈な寒波が襲来し、原油価格と一般炭の価格(スポット価格)をも上昇させ、同時に夏も冬も原油タンカーと製品タンカー(PC)にもプラス要因となった。
3)
【高価格原油時代の到来に関して】
石油消費量第1位の米国の堅調な経済に伴う輸入増、第2位の中国の需要急増と第6位となったインドの輸入急増、それに対応した供給余力欠如と言う構造的な問題を抱えている状態となっている。 Katrinaの上陸で瞬間的に暴騰する等一触即発の神経質な状態となっている。
   
(三) 上記に就いてのコメント − 結びに変えて

1) 【中国の粗鋼増産によるドライ市況へのインパクトについて】
小さくなっていることは否定できない。 それは新造船の市場参入とスクラップの休止で船腹供給圧力が強まっているからである。 勿論、季節的な要因や突発的な事件などで今後とも市況は上下変動はするが、市況の山が前回より低くなり、上下の振幅幅が小さくなっていくと言う市況軟化の通常のパターンの発生は避けられないであろう。
2)
【ハリケーンと欧州の今冬の寒波について】
興味ある記事が12月3日のEconomistに掲載された。 
  概略は「大西洋に●DSRF(Deep Sea southerly return flow)と●Ocean current(太平洋の黒潮の大西洋版)の2つの海流がある。 地球の温暖化で北極海とGreenlandの氷が溶け海水の塩分が薄くなり沈降量が減少しDSRFが弱くなり,冷たい海水が滞留して欧州に寒波を齎している。 他方、この結果北上するOcean Currentが弱まりカリブ海を含め南の海水温度が滞留により高くなり、猛烈なハリケーンが発生している」との学説である。 地球の温暖化を遠因とするならば恒常化が危惧されるが、今回の寒波で温暖化阻止の自律回復の端緒となるのかが問題となる。 それを占う意味で今年の夏の北極海の氷河の後退が止まるのか、その度合いが注目される。
3)
【高原油価格について】
現在はこの上にナイジェリアの反政府勢力の油田襲撃、イラン
の核開発、パレスチナのハマスの勝利、ウクライナへのガスの供給停止など石油エネルギーの地政学的な不安定性は増加している。 原油価格、引いてはタンカーマーケットに影響を与えかねない事件が続発し、不安定性が強まっている。
4)
【ドライが軟化傾向、タンカーはドライより堅調と言えそうである】
理由は@はドライ部門で軟化の前兆であり、Aは3年連続となればタンカーにはプラス要因、Bはプラス要因ではあるが、原油価格次第、$90台と大幅に高騰した場合はタンカーにも悪影響を与えることになる。
 
   


 

何時まで続く中国鉄鋼の増産 2006年1月掲載
    中国の鉄鋼の大幅増産が続いている。これがドライ市況の底堅さを支えているものと思われる。今回はこの問題を中心に整理することとする。
   
(一) ドライの堅調の背景

1) 中国の鉄鋼関連
中国の粗鋼生産は史上最高を更新中で止まることを知らない勢いである。粗鋼生産量は8月に月間3,000万トンの大台を超え10月には3,167万トンとなった。 3,000万トン台とは日本の粗鋼生産量を4ヶ月弱で生産可能であり、G7の生産量を凌駕する凄まじい量である。
それに対応する形で、中国の鉄鉱石の輸入量は、9月が2,302万トンと7ヶ月連続して2,000万トンの大台を超えている。 恐らく、10月の粗鋼生産量から推測すると輸入量も記録を更新しているものと思われる。
2)
世界主要国の粗鋼生産(1−10/05実績) As per Tex Report                (1,000MT)      
 
China
286,793
+26.5% EU(25) 161,651 △3.9%
India
26,749 +15.4% USA 82,643 △6.3%
Russia 53,541 △0.1% Japan 93,702 + 0.6%
Brazil 2,677 △3.8% Korea 39,544 + 0.6%
Taiwan 1,630 △0.5% World Total 915,425 + 6.2%
今回の海運ブームの最大の牽引車が中国であったことは万人が認める所であるが、今尚インドと共にドライを支えているのが明確に上記の生産量に現れている。
微増ながら日本と韓国の健闘と台湾の減産が微減であったことが、欧米の減産の海運市況への悪影響を可也の部分部消していると考えて良さそうである。
   
(二) 危険信号

1) 鋼材価格の三層化と言われ、中国の過剰生産による付加価値の低い建設用や汎用鋼材を中心として値下げ圧力が強まっていることが実態のようである。
2)
中国の半製品を含めて純輸出国となっており、周辺国に減産を齎している。
3)
原料炭とその製品たるコークスの価格動向は従来から鉄鋼業の動向を敏感に映し出す鏡の役割を果たしていたが、その中国の石炭コークスは過剰投資と中国以外の粗鋼減産で過剰生産がとなっている。 昨年春$450であったのが原料炭の価格並みの$120と1/3へ暴落しており、厳しい状態となっている。
4)
8月30日の$70.85より低落したとは言え、依然として高原油価格が継続している。市況の牽引車であるが、省エネでは後進国である中国と印度への悪影響が心配である。
   
   
(三) 結びに換えて

1) 目下の注目点は
中国の鉄鉱石輸入が2,000万トン台の水準を維持し粗鋼3,000万トン台を今後持可能か、更に増産になるかである。
中国のコークス産業の今後の推移である。 又、期近の問題ではないが、過剰となった設備の削減策がどのような方法でなされるかである。 800社以上あると言われる高炉メーカーが何れ同じ道を辿ると思われるからである。
今後の原油価格の推移である。 原油と競合する一般炭の価格(FOB価格が$350攻防)が値下がり傾向を強めている。更に、今年中国の石炭への投資が76.8billionとなったと言われている。石炭の増産で原油輸入増が若干抑制されることも期待できそうである等で、原油価格上昇の歯止めの要因も少し生れているようである。
2)
以上からドライ市況は下向局面に変わりはないが、多少のup/downを繰り返し来年の夏枯れまでは堅調を維持し、船腹需給タイトな状況下での(昨年夏スタートとして)3から3.5年程度の堅調を維持する可能性があると思われる。 但し、不安定要素として、初めての中国主導の市況で予想外のことが発生する危険性があることと、粗鋼生産量などの統計の信頼性欠如などがあることである。