ハリケーン「カテリーナ」に就いて 2005年11月掲載
    史上第三位でカテゴリー5、最大風速70mの強烈なハリケーン「Katrina」が海運界に馴染みの港湾都市ニューオリンズに8月29日上陸し大損害を齎した。 大規模な停電や港湾労働者の避難などで港の機能が一時停止し、穀物輸出の半分以上が通過するミシシッピー川も喫水制限(9月中旬に解除)や夜間航海の禁止措置がとられた。 当初は1ヶ月で30%、3ヶ月で4分の3の復興を要するなど米国史上最大の自然災害(largest loss from natural disaster)で昨年のIvanの27億ドルの倍以上の55億ドルの損害と言われた。バルカーは12日に鋼材の荷役が再開された。 コンテナ船は14日に寄航開始と報じられた。今回は今後の参考資料としてその影響に就いて整理しておくこととする。
   
(一) ドライ部門
1) 穀物の世界最大の積出港であることでドライ市況への影響が懸念されたが、積荷用のエレーベーターは完全停止とはならず6割程度の積み出しが可能であったことで、市況への影響はほとんど無かった。 その後10月上旬には完全に回復した。
2)
今年の穀物が豊作で需給がタイトでなかったこと新穀の輸送開始前であったこと等で穀物相場も運賃同様影響は軽微で済んだ。
   
(二) タンカー部門

1) 第一段階‐製油所の損傷が未回復の段階
米国では製油所の不足が指摘されていたが、製油所が損害を受けた為瞬間的ながらの石油製品不足となりガソリンが2倍、天然ガスが8倍と価格が暴騰した。
一方原油の輸入も製油所の損害により輸入が抑制される形となり、原油価格も原油タンカーマーケットも頭打ちとなった。 ガソリン価格が上昇すると原油価格が上昇し、タンカーマーケットも上昇すると言う方程式が一部否定されることとなった。
PC(Product carrier)には強烈な追い風であり暴騰となった。 一方VLCCは原油処理が減少した分荷動き減となり運賃の上昇が頭打ちなった。期待が強かった冬場のタンカーマーケットの上昇が遠のいた感じが否定できない。
2)
第二段階 − 製油所の完全回復の時期
製油所の回復時期に就いて欧州ではseveral monthと表現され、日本では今年一杯は無理ではないかと推測されている。
この回復状況はPCのマーケットが教えてくることとなるが、10月13日現在PC(MR型)で星港/日本の運賃は2倍強のWS535である。 回復には時間が掛かりそうである。
   
(三) 結びに換えて

1) アラバマとルイジアナ両州の米国GNPの5%と言われ、ハリケーンにより失業者増50万人、ニューオリンズ経由の輸出額(殆どが穀物)は全米の4%、輸入額(原油・鋼材・木材)は5%と言われ額的には小さく米国経済への影響は軽微だと言われている。 但し、量的な面での海運への影響は無視できず、特に、エネルギー部門でPC船が暴騰している。
2)
従来から海運市況に影響を与える気象現象エルニーニョであったが、太平洋の台風とカリブ海のハリケーンが特にこれらの暴風雨が主役を奪った感じである。 又、地球温暖化の所為か気候が凶暴化の傾向を示している。 今回の様な自然災害が海運市況の新たなunknown factorとして登場したとの認識持つべきである。
3) 76年以降北米で新規の製油所が建設されていないと言われている。 これが一部製油所の損傷で製油所不足を顕在化させPCマーケットを暴騰させている。 又、製油所不足が石油製品の高価格を恒常化させ原油価格を上昇させているとも言われていた。 これは大陸棚の存在で大型港湾用の適地がなくVLCCを受け入れる製油所が建設されなかったこと、89年のExxon Valdezの漏油事故で巨額な賠償金が支払われたこと等によると思われる。
4) 「Katrina」による輸入減の反動としてVLCCのマーケットが高騰するのか否かである。不需要期が近くなっての製油所回復・原油需要回復であれば、需給に余裕が生まれその分VLCCの反動高は小さくなると思われ、結果としてPC船に上昇エネルギーを吸収されたことなる。 製油所の回復状況に注目したい。
   


 

どうなるタンカーマーケット 2005年9月掲載
    今年のタンカーマーケットは予想に反してドライより早く軟化した。 海運市況はドライが先行してタンカーが後追いするのが通常のパターンであるが、今年の前半に限って云えば逆転現象を起こした。 今回はその背景について整理することとする。
   
(一) 月間平均運賃推移表(in WS)
As per World Maritime Analysis Weekly Report
  Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec
04
129 142 100 97 102 125 138 112 107 215 302 249
05 71 151 102 87 70 57 90          
昨年は夏場の不需要期もWS100を切ることがなく冬場に向けての期待感が膨らんだ。 それでも夏の時点でWS150まで上昇するには相当の勇気が必要であった。 05年は予想に反しての1月の急落、4月以降の低迷継続である。 悲観論が増加しているが、WS150への回復を全面的には否定できない状況である。
   
(二) 顕著な在庫増

1) Oil Market Intelligenceによると6月の世界の原油在庫が対前年比2億2,600万bbl増の66億bblとなった。これは需要の鈍化傾向とOPECの増産に伴うものである。 今年の2ndQの原油供給は848万b/dで250万b/dの供給過剰となり、5月は98年5月以来300万b/dの供給過剰となった。
2)
6月早々の米国の原油在庫が予想よりも430万バーレル増加し3億3,400万bblとなり、99年5月以来の高水準となった。 尚、米国の危機的水準とは3億バーレルである。
   
(三) 不規則性(erratic)と伸び率低下の中国の原油輸入の実態

1) 1月の原油輸入が2年半振りの輸入減で、04年の月平均の245万b/dから24%減の184万b/dとなった。これは200万bbl積VLCCの9隻分に相当。12月の278万b/dの反動減と言われた。
2)
2月は276万b/dと増加し運賃も回復したが、1-2月の2ヶ月間で230万b/dで昨年の平均に達せず本格的な回復とはならなかった。
3) 3月は245万b/d(推定)で昨年の微増、4月は記録的に最高の300万b/dとなったが、季節的な要因(日本・韓国補修時期と季節的な不需要期)もあり運賃上昇とはならなかった。 輸入が300万b/dと増えても運賃上昇しなかったことは先行きの運賃に過度の期待は持てないと言う疑念が生まれた。
4) 5月の輸入は前月比18%減の250万b/dと微増であったが、運賃の軟化の気配は変わらなかった。
5)
6月初め、IEAは中国の年初よりも需要低下の予想に変えたが、その分北米とOECD Pacificが穴埋めして世界の需要量を8,430万b/dに据え置いた。しかも今年前半の輸入は対前年比4.5%増ととどまった。この意味するところは市況高騰の要因としての中国の役割の低下を意味していそうである。
   
(四) 結びに変えて

1) 中国の月間の輸入量が昨年の平均240万b/dを越えた程度では市況に影響が出ず、更に、記録的な300万b/dとなっても月を越えて継続しなければ市況に影響を与えていないのが今年の実態である。
2)
トンマイル面でのマイナス要因として米国向けのカリブ原油の安定的輸入や西アフリカ原油の輸入も昨年を上回っている。 また昨年上期125から30減の95航海となるなどの西アフリカからのアジア向け制約減少も無視できない。 輸入減が遠距離ソースにしわ寄せが来る典型的な例であろう。
3) ドライ同様新造船の市場参入(05年は32隻)と中国の輸入増の低率化が市況を悪化させていると考えられないこともない。但し、06年は17隻程度でドライより供給圧力は小さい。
4) 昨年の夏場、タンカーマーケットがWS150となるのは夢だと感じた。 その後はご周知の通りWS300を遥かに越える史上最高の市況となった。 今年の夏場、需要増を期待してか原油価格は8月上旬に史上最高の$65を記録している。 この高騰は『(二)1)参照』イランを含めた中近東の政治的緊張感の増大と米国でのガソリン在庫減少等によるものであり、実需から乖離している感も否定できない。 以上総合してWS150が単に夢で終わるか暫く推移を注目したい。
   

 

 

昨年同様夏場に回復するのかドライ市況 2005年7月掲載
    今年のドライの市況は4月を境に軟化した。 運賃の推移と水準などの状況は昨年と酷似している。 目下の最大の注目点は昨年同様急回復するのか、回復しても穏やかになるのか、逆に、低落ないしは暴落するのか、それとも現在の水準を維持するのかである。 今回はSSYのMonthly Shipping Reviewの紹介と内容に就いての私見を述べることとする。
   
(一) “Repeated Pattern” reported on 15th May

ドライの市況は4月に17%急落し、5月初めには抵抗の気配があったが、その後更に低落しBDIが3770となった。 この事態は後半に回復した昨年のこの時期との状況(傾向と水準)が酷似している。 04年と今年の比較をreportすることとする。

1) 今年は2月の高値の半値の$20,000(既に切っている)と急落したパナマックス主導の低落である。 理由はイ)中国のインド鉄鉱石輸入減、ロ)印度による中国の一般炭の輸入減(自国の消費増と近距離のインドネシア炭や豪州炭に対しての価格競争力欠如)、ハ)豪州炭積出港の滞船の減少、ニ)パナマックスが顕著である韓国・日本・中国からの数多くの新造船の竣工である。 事実1Q/O5は史上最大の630万dwtが参入した。 その結果は、イ)パナマックス庸船が西高東低の格差が大きくなり、中南米やガルフまで空船で戻る傾向が生まれ大西洋の市況をも軟化させている、ロ)ケープとパナマックスの庸船格差は過去2.5年の平均は2.0:1.0、4月現在2.48:1.0となり、ハンディマックスとの場合、過去2.5年の比率は1.0:1.28であったのが、2月中旬1.5から1.05へ小さくなった。 明らかにパナマックス主導の軟化となった。
2)
不安材料としては心理的面に加え中国の鉄鋼市場に対する規制と世界鉄鋼市場に於ける鋼材価格が軟化していることである。
3) 憂慮すべき事態ではない背景は、世界の鋼材需要増傾向のファンダメンタルに変化がなく破綻していないこと、一般炭のスポット価格が高止まりしていること、04/4Qほどの急騰はないかもしれないが、今年の4Qに新たな山が来ると予想している。 新造船参入の供給圧力はあるが、それを吸収しそうである。
4) ドライの市況を左右している鉄鋼業に就いて、同誌は次の通り述べている。
04年の主要国の鋼材需要増は、EU-15: 5.3Mt、北米: 12.3Mt,日本: 3.4Mt, 中国:23.6Mt(世界の需要増の35%相当)で先進主要国と中国が消費増を支えた。 05年はIISIの数字を使用、北米の-4.0Mt、韓国の-1.4Mtの消費減を中南米の2.9Mtと印度の2.0Mtと日本の1.6Mt増と中国が10%増の約億トンの大台乗せで穴埋めすると予想している。
5)
SSYの結論は、IISIの予想が正しければ05/4Q には前年程ではないが回復する。
   
(二) 上記に就いてのコメントと結論

1) 今年後半はピークアウトしたが暴落も暴騰もなしで現状(BDI-2/3000程度の水準維持然し、年度末駆け込み需要の調整と季節的な要因を主としてのup & downとなろう。
2)
暴落・暴落しないと思われる理由 − イ)中国が鋼材の純輸出国となった上、北米・EUの消費減による鋼材の過剰供給傾向により価格の軟化傾向は顕在化しているが、崩壊(collapse)までしてはいない、ロ)中国による鉄鉱石の輸入認可等の規制が実施され投機的動きが抑制され、効果も挙げている、ハ)調整用の印度鉱石の荷動き減は需要に緊迫感がない証左、従って昨年の暴騰はなさそうであり、他方、ケープの需要が底堅いことで暴落しそうな状況ではない、ニ)過去の市況のサイクル実績から現在の様な船腹需給がタイトな状態では堅調な期間(現水準も含まれるBDI2000程度以上)最長の4年強継続すると見るべき。
   
(三) 追記

中国の動向を基に分析・予想する場合、鉄鉱石や鋼材の在庫等の統計の不備と信頼性の欠如感が払拭できない。 共産主義政治体制を維持しながらの市場経済の導入で、価格のメカニズム、市場価格が需給に影響を与える機能が機能せず、政府の規制が需給に影響を与えざるを得ない。 更に、国営企業や公共投資は市況へ鈍感であること等々で、難しい市況の予測を一層困難にしていることを付け加えて置きたい。
   


 

最近の海運市況に就いての雑感 2005年5月掲載
    昨年11月の過熱状態には程遠いが、ドライ・タンカー共々コストを上回る高水準を維持している。 今回は多方面の情報を総合して取り纏めることとする。 但し、中国の数字・情報の入手が困難であり推測の部分が多くならざるを得ないこと予め承知置き願いたい。
   
(一) タンカーマーケットに就いて

1) 今年1月の中国の原油輸入が24%減少したと報じられた。 昨年の年間輸入が1億2,000万トン、月平均1,000万トンとなりその24%は240万トンとなりVLCC10航海分となる、昨年年初の輸入量は少ないと見ても8航海程度分の輸入が減少したこととなる。 スポット運賃の低落の主因であったと言えよう。 中国の輸入減を切掛けにマーケットが低迷した01年の5月とは違い、2月は数量的には回復したが、この後遺症のためかマーケットに勢いを感ぜずWS100前後推移している。
2)
今年の中国の経済成長は8%程度成長と予想されている。 「1%の経済成長は13万bpd原油輸入増となる」と言われ100万bpd輸入増が予想されている。 従って、タンカーマーケットがドライよりも堅調を予想している。 然し、それに対応した製油所が建設されているのかである。 遅れていれば石油製品の輸入増となる。 VLCCと石油製品輸送船(Product Carrier)の何れの運賃がより堅調になるのか注目したい。
3) 原油価格が史上最高値の$58を超えた。 経済への中期的な悪影響は別として原油需要と、引いてはタンカー需要の強さを市場が自己表示をしているものと思われる。
   
(二) ドライマーケットに就いて

1) 昨年11月16年6ヶ月ぶりに中国の鋼材の純輸入国化となったが、この傾向は現在も継続している。 これは鉄鋼の過剰設備・過剰生産の顕在化と言えそうである。
2)
中国の鋼材需要が2月に97年(アジア経済危機の年)以降初めて0.6%減少した」6/Apフィナンシャルタイムによる。 この消費減が継続するのか特に注目したい。
3)
以上から鋼材市場は供給過多傾向と需要減の二重苦に苛まされることとなりつつある。 一方、バングラディッシュが2月$470/ldtで購入したが、これは鋼材不足というよりも、スクラップ船の供給不足で設備の遊休化を回避のための緊急避難的な購入と考えたほうが良さそうである。 この$470は昨年の新造用の厚板価格が5万円程度とほぼ同一水準である。 新製品の鋼材とスクラップ価格に大差がないことは一時的現象とは言え異常事態であるといっても過言ではあるまい。
4)
中国の商務部が鉄鉱石の輸入許可制を3月1日より導入5月1日より完全実施に踏み切った。 03年中国での500立方米の小型高炉が数多く建設され鉄鉱石がスクラップ同様の投機商品となった。 新年度の鉄鉱石価格の大幅上昇の予想は大量の思惑輸入を引き起こす土壌が形成されていたと見るべきである。 昨年暮から年度末にかけて、従来と違い投機的・的駆け込み輸入増がかなりの数量となったと推測される。 結果、輸入規制の必要が生まれた考えるべきであろう。 思惑輸入の反動減が懸念される。
5)
鉄鋼原料の鉄鉱石の71%アップ原料炭2.25倍のアップは、鋼材の価格上昇を引き起こすこととなる。 経済原理通りの価格上昇に伴う需要減退が懸念される。
   
(三) 結びに代えて−踊り場から如何に変動するのか

1) ドライの方に不安材料がやや多い感じである。 第1に中国の鋼材の需要減と供給過剰傾向が顕在化していることである。 このような状態が継続すれば、鉄鋼原料の大幅上昇のコストヘッジが困難で粗鋼原産の要因となりやすい。 第2に自動車産業の過剰投資である。 日本車でも値引き競争に曝されている状況で今年の予想生産台数507万台(昨年比14.1%増)がどの程度売れ残るかである。 その結果次第では中国の消費力に不信感が生まれ中国への投資意欲に影響を与えるからである。
2)
タンカーの不安材料は第1に1月の原油輸入減である、これが全般的な需要減によるものか、原油価格高騰を抑えるための政策的なものなのか、その他の要因なのかが問題となる。 第2に原油価格の更なる高騰があれば経済にマイナスとなりドライを手始めにタンカーへの悪影響の広がりが懸念される。
   

 

 

年末年始に乱高下した海運市況に就いて 2005年3月掲載
    2004年は海運の歴史上記録尽くめであり、1世紀後でも語り続けられる輝ける年であった。 然るに、昨年第四四半期から年初にかけてドライは、BDIが06/Decの6209ポイントから24/Janの4292と3分の1の約2000低落、VLCCもWS395から1月終わりにかけ6分の1のWS60を割り込む(その後160近くまで回復)など非常に不安定で、史上最高値の暴騰から信じ難い暴落が起こっている。今回はその背景に就いて整理することとする。
   
(一) 投機性向を強める最近の海運市場

1) 乱高下は船腹需給がタイトな状況で往々に発生する。 微動すらしない低落時と好対照である。 市況の地合が目下堅調であることを市場が自己表現していると言える。
2)
バルカーもタンカーも商品取引の対象であることは周知のことである。 従って、投機的な動きをする性向を本質的に持っている。 一方、輸送貨物が食料やエネルギー商品でありヘッジファンドの最大の取引対象の一つでもあること、加え、従来あまり投機的な商品ではなかった鉄鉱石が、03年に中国で短期的な高収益を期待して500立米の高炉が80基建設されたことで認識された様にスクラップと同質の投機性を持った商品と変質している。 これらの海上貨物の運賃の取引スタイルがヘッジファンドの影響を顕著に受けることとなり、スポット運賃も他の商品取引同様激しい上下運動をする傾向を強めた。
   
(二) ドライ部門−旧正月を前に軟化の微妙な動き
今回の海運市況暴騰の主因である中国の粗鋼増産(04年は23%増の3.1億トン)と鉄鉱石輸入増(04年は40%増の2.1億トン)の傾向は変わらず、その最後の仕上げとして新年の原材料価格上昇を見込んだ中国による年末駆込み需要を齎し2月を上回る暴騰となった。今後ドライ市況を占うために次の3項目を取り上げ注目したい。

1) 旧正月明けから3月中旬にかけて、日本による年度末駆け込み需要と南米グレーンの荷動き増で、軟化気味の市況に歯止めとなるのか? それとも3回目の暴騰となるのか?
2)
中国による鋼材の輸出増は過剰設備・生産の顕在化であり、粗鋼減産の前兆なのか? 輸出が困難と言われている中国産自動車の売れ残りが(外国企業による中国への投資意欲を左右する為)更に増加することとなるのか?
3)
運賃・鉄鋼原料の高騰に伴う高鋼材価格でもインフラ整備の為の需要の継続が可能か?
   
(三) タンカー部門−ドライよりファンダメンタルが堅調と推測
史上最高を記録した原油価格とタンカー市況は、中国と印度による原油輸入増と中近東だけではなく遠距離のナイジェリアからも輸入増となっていることと、米国のお膝元のベネズエラ(155万bpd輸入)とナイジェリア(115万bdp輸入)の政治不安がVLCCによる遠距離ソースからの輸入比率を増やし事などによるものであった。 その最中にカリブが数回にわたりハリケーンに襲われ、船腹の団子状態となりオイルショック前のWS325を越える史上最高のWS395の運賃を齎した。 タンカーの場合は、次の2項目を注目したい。

1) 不需要期を前にWS60前後まで暴落(その後2月の第1週には160まで回復)したVLCCの市況がどの程度まで回復するのか? そして、ドライが軟化してもタンカーは堅調というドライ追随型の市況の推移を今回も辿るのか?
2)
環境は激変しているが、01年の様に中国政府による原油輸入規制が発生しないのか?

(四) 結びとして−2005年の注目点
中国の高度最長は世界経済に強烈な影響を与えている。 日本の高度成長がドルショックとオイルショックの主因となったが、中国の高度成長はインパクトが強烈なだけドル安と中国人民元の切り上げは避けられず、オイルショックの様に海運市況に悪影響を齎す荷動きの急減や予想出来ない何かが起こっても不思議ではない。
   

 

 

暴騰続くドライとタンカー市況に就いて 2005年1月掲載
    中国の鉄鉱石と原油の輸入量は、依然として増加の一途をたどっている。 結果として、ドライ・タンカーの市況共々高騰よりも暴騰という表現が適切な状態を維持している。 ドライは、期末の中国による駆込み需要もあり最高値の2月を超える勢いを示している。 ドライよりも遅れ気味であったタンカーは、BRICsのもう一つ旗手である印度の原油輸入の増加もあり、VLCCがオイルショック前の市場最高のWS375(記憶が正しければ)を越える勢いとなっている。 今回はドライとタンカーの趨勢の違いを整理することとする。
   
(一) ドライに就いて
ドライ市況を支えているのは中国による鋼材の需要増・鉄鉱石の輸入増であることは否定できない。 中国の鉄鉱石の輸入増は1年をとうして前年比20〜30%増となったが、それを反映し春の一時期を除き予想を遥かに上回る高運賃を維持している。 然しながら、底流に変化の兆しが見られる。 特に、付加価値が低い鋼材の市況に変化が現れている。

1) 「10月半ばにつけた直近の高値に比べ11%(6千円)下がるなど製鉄原料の鉄スクラップが続落し、更に、大阪市場の棒鋼が20%の減産にも拘らず、夏場まで上昇した価格が3年ぶりに反落した。 東アジアの緩和感が払拭できていないである」30/11日経。
2)
中国の鋼材の輸出が急増、今年は300万トンを越えていると言われている。 一方、競合関係にある鋼板類(低付加価値製品と推測)の輸入が急減している。「9月はウクライナ97%、ロシア68%、印度84%の何れも減」であり、三国合計54万トン減となっている。 中国鉄鋼の過剰設備の顕在化であり鋼材輸出の恒常化の先駆けを示すものである。
3)
一方、薄板不足による日産自動車の減産やスズキ増産中止が報じられているが、更に、造船用の厚板不足も話題となっているが、何れも、日韓・欧州の先進鉄鋼国の製品であり関連の設備不足が原因であり、粗鋼増産のプラス要因となるとは言いがたい。
   
(二) タンカーに就いて

1) オイルショック前のOBO船の配船担当の経験から市況の上昇は「ドライ先行タンカー追随」が通常のパターンである。 これは好景気→投資拡大→設備拡張→粗鋼増産、その後にエネルギー需要増となるからであると考えられる。 従って、今回も同じ過程を辿ると考えるべきである。
2)
IMFによると「世界経済の1%の成長増は50万bpdの石油需要を齎す。 今年は5%成長の250万bpd増であったが、来年は4.3%成長の215万bpd増と見込んでいる」ことで依然として堅調な船腹需要が予想可能であると考えるべきである。
   
(三) 結びとして
「中国が鉄鋼輸入を増やす過程では世界的な鉄鉱石などの素材インフレを齎したが、来年以降は逆に鋼材が過剰となり素材デフレ起こす可能性が大きい」(資料保管中)の予測があり、この可能性が強まっていると考えられる。  即ち、付加価値が低い上に過剰生産では現在の暴騰中の運賃と高価格の鉄鋼原材料のコストを吸収できるとは思えないからである。 この高コストの主要構成要因がドライの運賃であり無関係で済むとは思えない。 

結論としては、ドライはピークアウトの気配が濃厚であるが、タンカーは原油の価格次第ではあるが上記のタイムラグもあり、現実問題としてそこまで到達しているとは思われない。更に、中国が原油備蓄を国策として取り上げたことで、来年夏の不需要期のタンカー市況軟化の一抹の不安が緩和される要因も生まれて来ている。